記憶喪失と偽装彼氏。【茅ヶ崎至】 (ページ10)

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10話 Side.至ページ10

万里が信じられないものを見るような目で俺を見る。

そんな目すんな、俺だって信じられない。

「あ、痣って……記憶喪失の原因になる事故とかで出来た痣じゃなくて？」

「違う。真新しいものの下に治りかけの……薄い痣があったとした時の話」

そう、これはあくまで例え話。

それを見つけた時、思わず身震いした格好良くない至さんの話じゃない。

「……不良に絡まれたことがあったとか」

「何でその発想に行くんだよ。そういうのに縁がない人だと思って考えてよ」

これだからガチヤンキーは。

「あーーー……じゃあ、どっかにぶつけたとかでいいんじゃないすか？」

「……その痣が、手足に無数に付いてたとしても？」

万里は押し黙る。

そりゃあな、そうなるよな。信じられないよな。

俺だって信じられない。

「ヤンキーとか、そっち系に絡まれた訳じゃないとしたら……同僚か男、二者択一な気がしますけど」

「デスヨネーーーー知ってたーーーーー」

ただ、俺はどちらかと言うと男の可能性を疑ってる。

何でかって、社内での名字さんの評価を知っているから。

多少の妬み嫉みを受けることもあるけど、彼女をあからさまに害そうという奴は、見たことない。

寧ろ、そんな奴いたらその前に俺がどうにかしてる。

だから、残る可能性は男……DV癖のある彼氏だと思ってたんだけど……

流石の俺も、彼女の全部を見てるわけじゃないし、何とも言えない。

どうしたものか……