記憶喪失と偽装彼氏。【茅ヶ崎至】 (ページ8)

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8話 Side.至ページ8

「…とりあえず、そのまま恋人ごっこでも何でも続けたらいいんじゃないですか」

長々と考えてそれかお前は。つまらん。

他人事みたいな顔しやがって。まあ他人事なんだけどさ。

いや、ね？俺だってそうしたいよ？

ずっと狙ってた女と、束の間の恋人ごっこ。

でもさ、それがホイホイ出来るほど、俺も子供じゃない。

「まず記憶戻った時が怖い」

「違いない」

「記憶が戻って、自分のしたことを追求されたら？それだけならまだしも、「茅ヶ崎さん最低！」とか言われたら？茅ヶ崎さん立ち直れないよ」

「とりあえず裏声キモいんでやめてもらっていいですか」

「黙れ万里」

今までコツコツ積み上げてきた名字さんの信用が無くなったら、俺は一体どうしたらいい？

最悪会社で言いふらされるかもしれない。

彼女がそういうことする人じゃないとは分かってるけど、色々悪いことが頭に浮かんでしまう。

俺こんなネガティブじゃないはずなんだけどな…おかしいな…

それに、悩む理由はもう1つある。

多分、会社の奴らは誰も知らない。

彼女自身も、覚えてないと思う。

診察した医者を除けば、俺だけが知ってること。

「…もしさ、その女の身体が痣だらけだったとしたら？」

「…は？」

俺の言葉に、いよいよ万里は言葉を失った。