記憶喪失と偽装彼氏。【茅ヶ崎至】 (ページ5)

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5話ページ5

茅ヶ崎さんはまた来ます、と言って帰って行った。

担当の先生も病室から出ていった。

同室に入院している患者さんはおらず、残されたのは私1人。

「…記憶喪失、か…」

小説や漫画の中だけの話だと思っていたのに、まさか自分がなってしまうとは…

実際になってみると、存外不安なものだ。

自分の名前も、歳も、家族構成も、身分も全部忘れてしまった。

名前と身分(と言っても職業だけ)は茅ヶ崎さんが教えてくれたけれど、それ以外は分からないまま。

私のことを知ってくれている人…茅ヶ崎さんが傍にいてくれてなかったら、もっと不安になっていたかもしれない。

でも、彼に頼ってばかりじゃダメだ。

自分で思い出せることがないか、色々頑張ってみよう。

まず、どうして記憶喪失なんてものになってしまったのか。

服の袖を捲ってみると、腕には痛々しい痣が。

念の為脚も見たけれど、腕と同じように痣だらけ。

どこかで事故に遭ったのだろうか…とりあえず、外部からの衝撃で記憶を無くしたんだろう。

でも、何があったかは全然思い出せない。

私の身に何かあったことは間違いないのに、肝心の何かが分からないんじゃ、自分のことを思い出すヒントにはならないよね…

そういえば…私が目が覚めた時、茅ヶ崎さんは担当の先生と話していた。

状況からするに、私は何かの衝撃で気を失い、その場に居合わせたのか私を見つけてくれ茅ヶ崎さんが、病院まで連れてきてくれた…多分。

それが本当なら、彼には相当ご迷惑をかけてしまった。

次に彼が来た時、謝らないといけない。