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32_竹ノ怪・五 ページ44

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さて、あれからどれほど時が流れたのかは分からないが、未だこの結界、いや…陣の根幹に触れる事は叶わない状況のままだ。そもそも、この陣に囚われている間、少しずつ体力が削られていくような、そんな感覚がある。

体力と言うには語弊があるが、それに近しい物…生命力、いや、元素力か。

少し陣の様子を見るだけだと考え、侮ったかもしれない。

この陣、入るのは簡単な割に、出る事に関しては困難を極める作りのようだった。それこそ、秘境と似たような原理で異空間に飛ばされていると言う表現がしっくり来る。

景色は全く変わらないのだから、当たり前のことに気付かなかったが、この陣に入るまでは木々や植物、それこそ竹や笹だって青々と茂っていたのだ。しかし、一歩踏み入ってみればこの惨状。

外から見たこの場所と、今俺がいるこの場所とでは、恐らく全くの別物なのである。


『秘境なら出口がどこかにあるはず…』


誰かに聞かせるわけでもないが、思わずぽつりと呟く。無風無音に近いこの場所で、俺の声はその場で拡散し、消えてしまう。聞こえるのは俺が歩く音だけ…。そう思っていたが、ほんの一瞬するりと頬を撫でる風を肌で感じる。

ほぼ無風なこの場所で、今までは草木も揺れなかったのに、揺れた。

もしかすると、どこかに風穴が空いたのかもしれない。なら、一瞬流れた風の先に目的となる出口が存在してもおかしくないだろう。ただで外に出る訳にはいかないがな。


『…あれ?』


風は常に東から吹いていたが、今方風がやんでしまった。恐らく風穴が閉じたのだろう。ということは、出口として常に風穴が開いている可能性はなくなったな。

それに、近付くにつれ濃くなる気配が一つ。

人の気配ではない。
しかし、良く知った気配。

なんでここにいるのか全く分からないが、俺は呼んでいない訳だし、理由は明白だ。


『魈』

「チェルー様、ご無事で」

『うん。魈は何故わざわざこんなところに…』

「帝君…鍾離様から言い渡され、チェルー様のお迎えに上がりました」


ね、明白。こういうときは、大体モラクスが何か仕組んだと相場が決まっているのだ。

迎えに来たと言っているが、魈も状況が分かっているのか俺を前にしても警戒が解けず、常に周りを気にしているようだった。いくら表情を取り繕っていても、やはりそういうところは滲み出ている。

しかしまぁ、俺の迎え、ね…。

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もぶ - たぬき印さん» うわあああ、返信ありがとうございます!!めちゃくちゃ面白いです!!!少しずつ明らかになってくの楽しみです...!!! (2022年9月10日 22時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - もぶさん» ここまで見てくださってありがとうございます!これからも2人の関係は少しずつ深掘りしていく予定なので、引き続き楽しんでいただけると幸いです! (2022年9月9日 1時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
もぶ - うーーん、鐘離先生と夢主君の関係が好きぃ...お仕事頑張って下さい!!更新首を長くして待ってます!! (2022年9月8日 1時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - はなさん» 2話投稿時には既に修正しておりました。恐らく更新による時差かと思います。ご迷惑おかけしました。 (2022年2月13日 16時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - オリジナルフラグたってますよ……! (2022年2月13日 4時) (レス) id: 1f4f011eda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たぬき印 | 作成日時:2022年2月12日 2時

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