10_飽和・三 ページ10
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『おいモラクス、どこまで行くつもりだ!!』
「直に着く」
ここは翠決坡。
かつての封印の地として存在していた場所だが、こんな場所まで来て一体何をするというのか。
先程からモラクスがしたり顔で口角を上げ、歩み続けているのが何よりの恐怖でしかない。
そういえば家を出る前にも、せっせと何かの準備をしていたな。何かを磨いていたような…。
一体何をやっていたのかまでは見ていなかったが、いい予感が一つもしない。
「俺は…」
『?』
ふと翠決坡遺跡内部で歩みを止め、こちらを振り返りポツリと何か呟くモラクス。
なんだ?目的地にでも着いたのだろうか。
「俺は、昔お前と契約したな」
『けい、やく?』
まずい、何のことだか全く思い出せない。まず何に対しての契約だ?一体どれほどの契約をしたんだ…?
「だがそれは破られた。ならば、代償を支払ってもらわねばなるまい」
『まさか…そのためにここまで来たのか!?』
「そうだ、港付近では俺が本気を出せない。かと言って山を選べば、お前の能力向上をはかりかねない」
そうだ、その通りではある。
月に近ければ近いほど、失った力を取り戻しやすいし、俺だって本気を出せる。岩元素を扱うモラクスが、岩の共鳴を起こしやすい山岳地帯を選ぶのと似たような物だ。
この翠決坡の、盆地という環境はモラクスにとって最高の戦場たらしめるだろう。
しかし"俺"はそんな呑気なことを言っていられない。
ここは月の光も届かぬ空間だ。
それに、俺は今とある事情により力が極限まで弱まっている。それこそ、モラクスと正面切れば一発で負ける可能性すらあるくらいには。
『それを理解した上での事か…』
「無論。お前を捻じ伏せるにはこれほどまでに好奇なタイミングはない。月に加護されぬこの時期でないと、俺はお前に勝てないだろうしな」
『ひ、卑怯だぞ!!』
「卑怯?…分からないのか、チェルー。これは手合わせではない。支払われるべき代価だ。それに、俺が本当の意味で本気を出せるのも最後になるだろうからな」
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もぶ - たぬき印さん» うわあああ、返信ありがとうございます!!めちゃくちゃ面白いです!!!少しずつ明らかになってくの楽しみです...!!! (2022年9月10日 22時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - もぶさん» ここまで見てくださってありがとうございます!これからも2人の関係は少しずつ深掘りしていく予定なので、引き続き楽しんでいただけると幸いです! (2022年9月9日 1時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
もぶ - うーーん、鐘離先生と夢主君の関係が好きぃ...お仕事頑張って下さい!!更新首を長くして待ってます!! (2022年9月8日 1時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - はなさん» 2話投稿時には既に修正しておりました。恐らく更新による時差かと思います。ご迷惑おかけしました。 (2022年2月13日 16時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - オリジナルフラグたってますよ……! (2022年2月13日 4時) (レス) id: 1f4f011eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たぬき印 | 作成日時:2022年2月12日 2時