12_飽和・五 ページ12
.
『ッ…完敗だ…』
「まだ代償を完全に支払ってもらったわけではないが、いいだろう。次で最後だ。返してもらうぞ」
『待ッ!ア"ァ"ァ"___!!ウ"ッ…ガハッ__』
信じられないことに、モラクスは俺の持つ岩元素の性質の一切を俺から引き剥がそうとしたのだ。
腹にはモラクスの腕が沈んでいる。
内臓を鷲掴みにされたような気持ち悪い感覚がすると思えば、突如体内が蜂の大群に刺されているかのような酷い痛みに襲われる。
なんとか腕をどかそうと抵抗してみても、更なる痛みに襲われ、次第に力すら入らなくなる。
体の中身が全てドロドロに溶けて、器だけになってしまったかのような不快感に、意識が混沌とし始めるのを感じた。
当然だ。
元素は血液と共に体内を常に循環する存在。
無理矢理にでも引っこ抜こうとすれば、到底常人には耐えられぬ苦痛が待ち受けている。
根源から引き剥がそうとする時の痛みは、魂が肉体から切り離される時の痛みと等しい。
あまりの苦痛に薄れゆく光。
もう何も考えられなかった。
「気絶したか…」
「あらあら可哀想に。存外手酷いのね」
「"淑女"………盗み見とはな」
「ダメだったかしら?凡人になると言っていたモラクスが、凡人とはかけ離れた姿にならなくては"勝てない相手"なんて言うから一体どんな化け物なのかと興味が出るのも不思議じゃないわよ」
「…これも契約の為だ。きっと"この人"は俺が神の心を明け渡すのを良しとはしないだろうからな。暴れられたら俺でも敵わない。無論、"ファデュイ"でもな」
「あら、そんなこと私の前で言っても良かったのかしらね。ふふ、"女皇"との契約が果たされる時が楽しみだわ」
消えゆく残像に、モラクスは目を細め、腕に抱きかかえているチェルーを見つめる。
決心は固く、決して揺らがせてはいけないからこそ、チェルーがいてはその決心が揺らぎ兼ねなかった。
必要なことだった、と割り切り、恩師に手を出すことのなんと難しいことか。
チェルーに関わると、自身も知らないような新しい感情が良く芽生えるな。と関心すらする。
——————
【概念説明】
「精神生命体」
一般的な霊体、仙体、地脈の記憶など
「物質体・肉体」
人間、動物など
「半精神生命体」
精神生命体が、物質体に宿る
または融合した者など
チェルーは、どちらかというと後者の融合です。
308人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もぶ - たぬき印さん» うわあああ、返信ありがとうございます!!めちゃくちゃ面白いです!!!少しずつ明らかになってくの楽しみです...!!! (2022年9月10日 22時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - もぶさん» ここまで見てくださってありがとうございます!これからも2人の関係は少しずつ深掘りしていく予定なので、引き続き楽しんでいただけると幸いです! (2022年9月9日 1時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
もぶ - うーーん、鐘離先生と夢主君の関係が好きぃ...お仕事頑張って下さい!!更新首を長くして待ってます!! (2022年9月8日 1時) (レス) id: 3fdbb0f866 (このIDを非表示/違反報告)
たぬき印(プロフ) - はなさん» 2話投稿時には既に修正しておりました。恐らく更新による時差かと思います。ご迷惑おかけしました。 (2022年2月13日 16時) (レス) id: e020d55359 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - オリジナルフラグたってますよ……! (2022年2月13日 4時) (レス) id: 1f4f011eda (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たぬき印 | 作成日時:2022年2月12日 2時