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何億分の一 51 ページ2

口々にみんなが僕に話しかけてくれとる中頑なに黙りこくってる流星さん。



「あ…あの、流星さん」


「どこ行っとったん?」



うっ………地を這うような低い声…かなり怒っとる。


「…その」

「どこ行っとったんって聞いとるんやけど」

「ひっ…」


こ…怖い、イケメンの本気をみたわ。



「あんな…めっちゃ混んでる廊下みたいなとこを歩いてたらなガーーーって衣装がいっぱいかかっとるスタンドが走ってきてな」

「…それで?」

「そりゃよけるやろ?サッてよけたらドーンてドアにぶつかったんや、運悪くそこがたまたま空いてたらしくて…」

「らしくて…?」

「部屋ん中にゴロゴロ〜って転がって…そのままドアが開かんくなってしまってな…呼んでも叫んでも誰も居らんかったんや」

「お前はアホか!」



『ぶたれる!!』


もの凄い勢いで立ち上がった流星さんから身を隠すように両手をあげた。

悪い事をしたのは僕なんやから、打たれたって当然だとは思っていたのに、いざ流星さんが目の前にきたらつい自身を庇ってよけてしまっていた。


「ほんまに……アホやな」


「…え?」


けど…打たれると思いぎゅっと目をつぶった瞬間にやってきたのは柔らかに包み込んでくれる優しい腕だった。



「心配したんやで…」


微かに震えている腕からは流星さんの優しい気持ちが流れ込んできた。



「りゅ…ぅ……せさ…ごめ……ごめん…なさ」


その後みっともなくもボロボロと流れてきた涙が止まらず僕は流星さんの腕の中で暫く泣いてしまった。



泣きながらも『ごめんなさい』だとか『間に合わなかったらどうしよう』とか『みんなに迷惑かけた』とか支離滅裂な言葉で必死に気持ちを伝えようとする僕を、メンバーのみんなは何にも言わずに優しく見守ってくれていた。



「…ああ…もう泣かんでええから」


「せやで…とも結局は間に合ったやん」


「パフォーマンスも完璧やったし」


「なんなら、ああいう仕掛けやってみんな思っとったで」




流星さんの一言をきっかけにメンバーが口々に僕をあやしにきてからは、そのままなし崩しにいつもの居酒屋に連れて来られていた。





『かんぱーーーい!』




気づいた時にはグラスを合わせていたなんて、僕は夢を見ていたんやないかな?


ただひとつだけ夢やないって確信できたことがある。



ここに居るメンバーはホンマにええ人達やって言うことや。

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作者名:rik | 作成日時:2019年11月17日 18時

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