何億分の一 50 ページ1
ガタンッて音がした。
しかもこの壁一枚へだてた隣の部屋から…。
四方八方に向かって、あれだけ叫んでもなんの反応もなかったのに…これは諦めかけていた僕にもワンチャンあるかもしれへん。
「声が届かへんのやったら、振動しかないやろ？」
音がしたはずの方向の壁を思い切り蹴り上げる。
『ドンッ！』
「気づいて…くれたやろうか？」
壁に耳を当てればをガサガサ…と隣の音が聞こえた…けどその音が止んだかと思ったらガチャりとドアの開く音がする。
「やばっ行っちゃう！」
助けを求めないと…今まさに叫ぼうとした瞬間にそれはやってきた。
『おいっ！そこに誰か居るのか？』
「い…います！ドアが開かなくなっちゃって助けてください」
そう言い終わらない内にウチに外側からガチャリと開く扉…。
見えたのは眩しい光と背の高い人影やった。
「神山？」
「そ、そうです！でも…なんで？」
「探してる奴がいたから」
「そうなんですか？！」
やっぱりみんな探してくれてたんや…現金なものでそれだけで嬉しくなってしまう。
「グズグズしてる暇なんてねーぞ、ほれ行くぞ」
差し出された手を取ると思い切り引き上げられた。
「ど…どーも」
「なにニヤニヤしてんのお前？泣いてるかと思ってきたのに」
「嬉しくて…みんなが探してくれたっていうのが」
「ふぅん…つまんね…」
急いで駆けもどってみればもう既に楽屋には誰も居らん…もしかしてもう僕らの出番終わってしまったんかな？
「おらっ！そっちじゃねーよ、そのままステージだ」
「うわっ！はいっ！」
こそこそとみんながスタンバッてる所へ合流した…暗転からの演出で助かったわ。
曲の出だしはベル音から、目覚ましみたいな音が鳴り響いてパッと照明がつくって寸法やったな…確か。
ジリリリリリリリ…
アップテンポで軽快な音楽とともにステージが明るくなる。
ホンマに………この時のメンバーの顔と言ったら。
面白すぎて後世に残したいくらいやった。
もちろん録画済やから見事に語り継がれたわけやけどな。
「ホンマにびっくりしたわ〜」
ごめんなのんちゃん…イケメンなのに残念な顔させてもうて。
「けどよかった…ともが戻ってきてくれて」
ごめんな淳太くん眉間のしわ増やしてしまって。
「けど、完璧やったな俺らのな俺らのパフォーマンス…ほんますごいわとも！」
照史くんあんま褒めんで…そないに褒められると照れてしまうわ。
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作者名：rik
| 作成日時：2019年11月17日 18時
