記憶64 ページ19
「はあ?」
食満先輩と呼ばれた彼は訳が分からないと言いたげな声をあげた。
どう誤魔化そうか。
このまま伏木蔵くんの前で話してても横から入って話を戻されそうなので、食満さんと伊作さんに近づき小声で話す。
「どうやら、おまじないに効果があると思い込んでいるみたいなんです。もちろん、本当はなんの効果もありません。ただの言葉なので」
話を合わせるようお願いすれば、伊作さんは快くひきうけてくれた。
しかし依然、食満さんは鋭い視線を送ってくる。
(私だって好きでやっているわけじゃないのに)
「伊作に変なことしたらただじゃおかねえからな。いいか? 俺はお前を信用してる訳じゃない。妙なことをしたら命はないと思え」
「留三郎……」
伊作さんは眉を八の字にした。
私は分かってますと言うが、どうせ何も起こらない。
心配するなら伏木蔵くんの方だ。
治らないと分かればきっとショックを受ける。
伊作さんの演技がどこまで出来るかにこの作戦はかかっている。
ちらりと乱太郎くんと伏木蔵くんを見ると、乱太郎くんは手を握ってどこかに祈り、伏木蔵くんは目を輝かせていた。
私たち三人はコクリと頷き、それぞれ覚悟を決める。
「いきます……。い、痛いの痛いの飛んでけぇ……」
語尾に向けてすぼんでいく声。
ああ、恥ずかしい。
それでも私は、治れと祈りながら唱えた。
健気なものだと自分を褒めたくなった。
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月8日 20時