探偵社には社畜系お嬢様がいるらしい【文スト】

4話 ページ5

『おかえりなさい、社長。それからごきげんよう』

スカートの裾を軽く持ち上げて、一礼

「……ああ」

『それで、御用は何かしら』

どんな用でも、貴方に呼ばれるのは喜ばしいけれど
取り立てて用があるならなんだって聞こうと思う

「……紫桜」

『はぁい』

「……こちらへ」

『えぇ』

呼ばれた通り、近くに寄る
そのまま頭を撫でられた

「よしよし、いい子、いい子」

『……ん、照れます……』

彼の手に擦り寄って、猫みたいに甘える
ふふ、とってもうれしい

乱歩さんに撫でられるのも、社長に撫でられるのもとっても好き

国木田さんや賢治さん、それなら“あの方達”に撫でられるのも好きだけど

……太宰さんと、“あの人”に撫でられるのは、そんなに好きじゃない
太宰さんは手つきがいやらしいし

……あの人、は、彼を＿＿＿


不要な話だ
忘れることはなくとも、今は必要ない
大人しく愛しの社長に撫で回されていよう

『……ねぇ社長、私、ちょっと疲れました……貴方のお膝で休んでもよろしいかしら』

しなだれかかって、上目遣いで甘えてみせる

「……！ああ、構わん。……いいのか？私の膝で」

『えぇ、貴方がいいの。……だめ、ですか？』

社長の袖をそっと引いて、落ち込んだフリ
……私、感情は薄いから落ち込むこともないけれど

「……断るわけが無いだろう。……おいで」

ソファに座って、ぽんぽんと自分のお膝を叩く社長のお膝に座る
そのまま抱きついたら、頭を撫でて抱き締め返してくれる社長

ふふ、やっぱり社長は優しい
どこかの港の悪徳組織の首領とは大違いだわ

愛しの彼を使い潰すだけ使い潰した、あいつとは……

………………思い出したらイラついてきた、けど、私は……

……まだ隠していないと

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