探偵社には社畜系お嬢様がいるらしい【文スト】

＿幕間、4話 ページ18

「ごめんね、紫桜」

『……いいえ。しょうがないこと、なのでしょう』

雪の日は、今でも苦手だ
彼と並んで歩いて、聞いた話を思いだす

国のためならしょうがなくって
それでも、しょうがないなんて言葉で済ませられるような事じゃなくて

私には、何も出来ない
それだけ
……それだけの、はずで

「愛してるよ」

『えぇ、私も、です』

「……でも、いいんだ。
僕がいなくても、どうか幸せにね」

春の陽射しみたいに、穏やかに笑うところ
私の頭を撫でる時の、優しい手つき

灰色だった私の世界に、色彩をくれた人
寂しさなんて理解できるはずのない怪物だった私に、寂しさを教えてくれた人


……だから、もういないなんて、まだ、






彼の訃報から数年後、私はとある御方に会っていた
……彼のことを聞くためだ

自害だった、と
彼の徴兵された歩兵小隊の顛末も、全て聞いた

死の天使だなんて彼は言っていたらしいけれど、私からすればただの悪魔だ

許せない、と思う
今だって、まだ憎い

笑って生きていることが許せない
あの人をあんな風に追い詰めておいて、今更人を助けるなんて笑わせてくれる
探偵社に入って変わったつもりでいるのだろうか




復讐、するのだ

……でも、私は弱い
異能者ですらないのに、あの女に叶うはずがない



猟犬に入ったのは、そのため
本来であればそんな実力は無いものの、神威の計画に協力するという理由で彼から後押ししてもらった

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