【歌い手】無(ム)【まふまふ】

10℃ ページ10

外へ出れば太陽の光が私をさした。
眩しくて、昼間に外へ出たのは久しぶりでなんだか戸惑った。







走って、走って。
まふは何処へ居るのか。





何も分からないのにとにかく走り続けた。









近くの公園にも、コンビニにも、川原にもその姿は無くて。



『ねえ…っ、まふ、…どこ』








不安になって。
やっぱり涙が出てきて。




涙で頬を濡らしながら走った。
雨で濡れたみたいに顔が濡れた。






でも、キミが、居ない方が嫌で。嫌で。









お願い、まふ、何処にいるの？出てきて。




心の中で呟いた。
ぎゅっと目を瞑った。
手を握りしめた。








「あれ？」





ぶわっと風が吹いて。顔をあげれば、





…そらるさんがそこへ立っていた。









『そらるさん、』




そう名前を呼べば





「泣いているの？」





なんて。
私は分からないようにごしごしと服の袖で目を拭った。





『なんか、目が痒くて』




通じるか通じないか分かんないような適当な嘘をついて誤魔化した。






「うそ。」




誤魔化すなんてできなかった。








「泣きたいなら泣きなよ。我慢しないでよ」





その優しい声で言われてしまうと、壊れてしまいそうで。駄目だ。こんなところで壊れていたら駄目だ。





私は一生懸命涙を堪えた。









「貴女が悲しいと俺も悲しいです。言って。何が悲しいの？何に苦しんでいるの？


…俺じゃ、頼りないかな」






ぷつん、と何かが切れた気がした。

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