【歌い手】無(ム)【まふまふ】

7℃ ページ7

キミの声を聞いたのは、たしか…








記憶が出てきそうで出てこくて。
多分これは眠いから。









「A…」



そんなふうに名前を、
私の名前を呼んでくれたのはいつだったっけ。





キミが私の瞳を見てくれたのはいつだっけ？









たしか、最後にキミが私の瞳を見たのは。









･



ザーザーと雨が降っている日だった。







今日みたいにどんよりしていて。





あの鋭い瞳がぐさって私に刺さってくるみたいな
そんな感じだった。


それが、最後だった。









そのときは怖くて何も言えなくて。



キミはきっと私に絶望しただろう。
私も私自身に絶望した。








『ん、っ！』




白い天井が見えて。







あれ…私寝てたんだ。
なんて気づいて時計を見た。
もうすぐ出なきゃいけない。





今日もバイト。









昨日と何も変わらない準備をして家を出た。







ひとつ違うことは、まふに何も言わずに出てきてしまったこと。
なんだか怖くて言えずに来てしまった。









夢の中のまふが蘇ってきて。





でもあの瞳は怖かったはずなのに。
キミと目が合いたくて
キミと目を合わせたくて
キミの目に私を映したくて







どうしようもない。

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