【歌い手】無(ム)【まふまふ】

6℃ ページ6

『あの、ここまでで大丈夫です…』




「え？」






家の近くの公園で私は立ち止まった。





「家まで行くし」







そういうふうに言ってくれているけど、
やっぱりなんだかまふと一緒に住んでいるから勝手に教えない方がいいかななんて後ろめたさがある。








『いや本当に大丈夫です



…あの、ありがとうございましたっ！』







少し歪んだ笑顔を見せて頭を下げた。







「…」




黙っているその人に背を向けて走った。
頭には響くけど、ついてこられても困るから









『…はぁはぁ、』




階段を上って自分の家の前に来る。
後ろを確認してあの人がいないのが分かって家に入った。









『ただいま』




返ってないのに毎日言うようになっていた。
まふが不審がらないように。
私が帰ってきたことが分かるように。









なんか、キミのことばかりだ。









自分の部屋に入り、ベットに腰を下ろした。



疲れがずん、と落ちてくるような感覚だ。









『ふう…』





なんだか眠いような
まあ眠いのは当たり前か。









あの人。なんだか綺麗な声してたな。

まふみたいに、









あれ…？





まふの声、思い出せない。
あれ、あの人の声が上書きされてる。









綺麗な、鋭いあの声は




思い出せない。









キミの声が…

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