【歌い手】無(ム)【まふまふ】

4℃ ページ4

『まふ、…今からバイト行ってくるね』





まふの部屋の前で小さく呟いた。









茶色の木のドアの前。
何度ここで立ち止まったか。





キミに会おうとして、ドアを開けようとして
何度躊躇ったか。









ずっとずっと勇気がないまま。
私はキミになにもしてあげられてなくて
キミはもう私にはうんざりしているだろう。



嫌われているかもしれない。








でも、それを嫌と言えるほど強くないから。




『ふう』








家を出た。









傘をさしてバイト先まで歩く。




この暗い中の雨は私をとても憂鬱にさせた。
足取りが思い。頭も痛い。









ずきずきと頭が唸ってる中でも、一歩一歩歩いた。
人混みの中でも、誰もいない住宅街も。





歩き慣れた道がなんだかほかの場所みたいに見えてしょうがなかった。









…少し熱があったのかもしれない。









･




バイト終わり。
いつも帰るのは朝方だ。




こんな生活ももう2年ほど。








頭が痛いのを知らないふりして元来た道を戻る。
キミのいる家に。
キミと住んでるあの部屋に。









ｽﾞｷﾝｯ




気のせいだ






ｽﾞｷﾝｯｽﾞｷﾝｯ







嗚呼雨のせい






ｽﾞｷｯｽﾞｷｯｽﾞｷﾝｯｽﾞｷﾝｯ









一定のリズムで頭ががんがんして。
吐き気もして。
なんだか目眩もして。






『…はぁ……』







その場にしゃがみこんだ。

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