五十三の巻 ページ8
『父』・『母』
それが何をするのか、どういう存在なのか。何の仕事なのか。
頭では理解していた。でも、父母からの愛などといったのはよく分からなかった。
人間が生まれてくるときは母親の胎内から。そして親が育てる。
夫婦ができ、子供が産まれ、幸せな家庭となるその過程で
親に愛されなかった子供はどのくらいいるだろうか？
『愛』
どういうものなのか、俺は知らない。
それでも、たくさんの人が俺のことを愛してくれる。
俺は人を愛することが出来ない。
それは人の愛しかたを知らないから
人を愛せない自分が憎くて、でも俺を愛してくれる人がいる
嬉しいことだろうが、俺にとってはもどかしい。
だって「好き」がなんなのかわからないから
『人格』
俺は感情がなかった。
ここまで感情を出せるようになったのも奇跡だろう。
そうして人格が出来た。でも、人格は変わるものだと学んだ。
何らかのショックや大きな怪我、精神的苦痛など精神に影響を及ぼしたら。
よほどメンタルが強くないと壊れるだろう。
憎悪と憎しみ。または孤独・・・そんなものから昔は成り立っていた。
今は・・・どうか分からないけど。
それなりの感情を持ち合わせて、それなりに成り立っているんじゃないかと思う。
『大切な人 −猿飛ヒルゼン−』
そんな俺を拾ってくれて、娘のように育ててくれたのは紛れもないあの人で。
アスマとか、兄弟のいる日々を。普通の日常と環境を作ってくれた。
何も恩返しが出来てない。親孝行だってしてない。
本当に、何も・・・何も出来てない。
このまま逝かれると、俺はあの人になにも出来ないまま終わる。
そんなのは真っ平ごめんだから。
大切な人っていうのかは分からないけど、あの人はあの人が言う「愛」に一番近かった
恋していたわけじゃないし、友達って感じでもない。
これが、あの人の言っていた「家族愛」って奴なのかもしれない。
・・・ちょっとだけ分かったかもしれない。
「貴方が俺に与えてくれたもの、決して無駄にはしないから。」
「だから、どうかッ・・・」
「・・・どうか、死なないで」
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作者名：雪林檎 | 作成日時：2015年12月5日 18時
