八十九の巻 ページ45
ｿﾞｸｿﾞｸｯ
あたりの空気が急に重くなった、これは・・・殺気か・・？
「・・・父上、母上・・・お久しぶりです」
現れた二人の男と女を前にして、膝をつき、頭を垂れるツクヨミ。
近づく度に空気が重くなる。誰だ、お前らは。
さっきまでいた鳥たちも恐れをなして飛んでいったみたいだ。
正直、俺も立っているのが辛い。虚勢を張る悪癖。
「・・・我等を前にして、恐れぬか。」
「！！Aッ・・」
それは一瞬のことだった。
瞬き一つした間に、男の方が俺の首筋に短刀を当てていた。
・・・なるほど。
「殺すんですか？」
ピリッ
首筋に鋭い痛みが走る。暖かいモノが肌を伝うのが分かった。
チラリとツクヨミを見ると、振り返って目を見開いたまま固まっていた。
視線を戻すと、その男の容姿はどこか見たことがあるようなそんな顔。
ばれない様に空いている方の手を背中の血月にまわす。
「俺、まだ死にたくないんです」
カウンター。
入れたと思ったけど、流石神様。綺麗に防がれてますね
とりあえずその反動で距離をとる。
「やめろ、A・・！！」
「お黙りなさい、ツクヨミ」
「ッ・・」
余裕そうだな、くそが((
こっちは何十発とお前のそのクソ強い攻撃に耐えてんだよおおおおお((
「ッぐ・・・」
肩にくらったし・・
これ普通の忍術じゃないだろ・・フラフラしてきた
倒れるのを防ぐために刀を地面に突き刺して膝をつく。
「はっ・・・ぐッ・・はぁっ」
傷口が熱を帯び始め、それがまるで生き物のように疼きだし始める
それは首筋の切り傷も同様。
「名を名乗るがいい・・・我の名はイザナギ。」
「・・・ッ」
口をあけてみるも、そこから声が発されることはなかった。
呼吸が出来なくなる感覚、そして心臓が握り締められるような痛み。
喉に手を当ててみるが何も変わらず、ただ皮膚をかきむしるだけ。
「Aッ！！」
「あ゛ぃ・・・っ・」
「これは・・・父上・・まさか」
駆け寄ってきたツクヨミがそっと俺の首筋をなぞる。
それだけでも、幾分か呼吸が楽になったような気がする
「ツクヨミ、分かっているな」
「立ちなさい、ツクヨミ。いきますよ」
「ッあ、Aッ・・ッはなっ」
「逆らうのか」
イザナギさんの威圧的な低い声があたりに響く。
白い着物を着た人たちにツクヨミは連れて行かれる。
「ぅ゛あ゛っ・・あ゛・・・ぃっ・・」
・・・どこに行く気だよ。この野郎。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪林檎 | 作成日時：2015年12月5日 18時
