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「初めまして。私はリニー。トラファルガー・リニーよ」
宜しくね、と笑った顔は男とよく似ていた。そして、きらりと光る指輪が目に入る。男の指を見れば、同じものがそこにあった。
あぁ、この二人は夫婦なのか。
「貴方のお名前は？」
「言う必要性を感じない」
「どうして？」
「信用できない」
「売り捌いたりなんてしないわよ？」
「そういったやつは皆札束を握りしめてほくそ笑むのが定石。だまされるか」
そういうと、男と女は顔を見合わせて、また困ったように笑った。
「じゃあ名前はいいわ。ご飯を持ってきたの。食べれるかしら」
「いらない」
「食べないと治らないんだ。早く退院したいんだろう？」
「だから俺はもう、っ！！！」
声を荒げると、今度は体に鈍痛が走った。
「くっ、そ…」
「ほら。安静にしていなさいといっただろう」
「っ、そんなこと言ってねぇよ…」
「言ったよ。…点滴が切れそうだな。そろそろ変えるか」
「そうだろうと思って持ってきておいたわ」
「あぁ、助かる」
てきぱきと処置を施していく二人。そんな二人を見て、吐き捨てるようにつぶやいた。
「…っなんのメリットもないだろ、」
「人助けに理屈なんて求めちゃだめよ」
「そうさ。私たちは医者だからな」
医者はそんな聖人じゃねーだろ。
そんな言葉を、俺なりの善意で飲み込んだ。
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
