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トラファルガー・ローside
俺には、カッコよくて、いつも優しい兄がいた。
アルビノという病気を持った兄様は珀鉛みたいだと言われていた。でも、俺は珀鉛というより雪みたいだと思う。真っ白で、体もすごく細くていつも長袖を着てる。傍から見ても、病弱そうで、少し目を放したらすぐにでも消えてしまいそうな雰囲気。
そんな雰囲気を持ってるのに、兄様は凄く頭が良くて、父様に次ぐ偉大な医者だった。国民のみんなが頼りにしてるのを俺は知っていた。兄様はそんなことはないというけど、父様も母様も頼りにしてることは子どもの俺から見てもわかった。
優しい笑みを浮かべて、白衣を着る兄様は俺の誇りだった。
「ロー、おいで」
兄様はいつも大きな骨ばった手で頭を撫でてくれる。父様や母様よりもずっと乱雑で、髪の毛がぐちゃぐちゃになるけど、俺はそれが大好きだった。
「おめでとう、ロー」
そう言って渡してくれた帽子は、今でもずっとかぶってる。捨てる事なんてできなかった。
忙しい両親二人に変わって、俺を育ててくれたのは兄様だった。勿論、二人から親として何もしてもらわなかった訳では無い。でも、二人よりも遥かに長い時間を兄様と過ごした。
兄様との思い出は、今でも鮮明に覚えてる。
梅干しが好きで、おにぎりの具はいつも梅干しだった。美味しいぞ？と言われて初めて食べたときのあの酸っぱさは二度と忘れない。おかげで俺は梅干しが嫌いになった。
日光が苦手なくせによく散歩に行くし、お祭りにもいく。行動力の化身のような人で、夏場は適当にふらついては酷い日焼けをして帰ってくるから母様によく怒られてた。俺も、兄様の体は心配だったけど、そうして兄様と出かけるといつも知らないことや知らない景色を見せてくれるから、楽しくて嬉しくて、必ず付いて行ってた。
「……」
ザザ…とポーラタンク号に打ち寄せる波を見る。
どうしてあの日、あんなことを言ったのか。
俺はあの悲劇から10年以上がたった今もずっと、後悔している。
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
