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「隣国が助けてくれる見込みは、ゼロに等しい」
「は、！？」
「世間はこれを感染症だと思ってる。だからか、国境が閉鎖される日も近いだろう」
「なんだ、それ…どういうことだよ！？」
「今朝怪我人が何人も運ばれてきた。聞けば国境付近に近づいたところを狙撃されたらしい」
言葉が出なかった。今現在、医者も足りないし病床も足りない。ラミこそ最上階の個室に寝かせているが、本来は使わない部屋である。それを差し引いても空いているのはごく僅か。明日大量に発症されれば、この病院ではもう対処できない。
「珀鉛を取り除く方法は必ずある…！！時間と人手さえあれば、！！」
ドン、と拳を机に叩きつけた父さん。…もう、俺もなりふり構ってはいられない。
「父さんの分の仕事、俺に回してくれ。そうすれば時間が少しでもできるだろ」
「今の仕事量をさらに増やすのか！？それではお前が、！」
「俺一人のために患者を捨てるのか」
「っ！！！」
ずるい言い方だとはわかってる。でも、こうでもしなきゃ親バカのこの人は医者になりきれなかった。
「…言うようになったじゃないか」
「アンタの息子だからな」
「生意気だぞ」
「今更何言ってんだ。あいにく、口は達者なんだよ」
悪戯っぽく笑うと、父さんも笑った。
出会った時からそうだったな、と懐かしむように目を細めて、と父さんは続けた。
「私やリニー、ローの発病も時間の問題だ…。私やリニーが動けなくなった時のことは任せたぞ、A」
「勿論だ」
その後、一週間も経たないうちにフレバンス側の攻撃への反撃として軍が攻め込んで来た。
戦争が幕を開けたのである。
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
