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「A先生！！急患です！！」
「診察室に運んでくれ。ここが終わればすぐに行く」
「はい！！」
最近、病院に引きこもることが増えた。父さんも母さんもあまり家に帰れていないし、俺も二人の勤務に関係なく出勤しなければならなくなった。家に二人になってしまうから、最近ではローもラミもよく病院に寝泊まりしている。二人は秘密基地みたいで楽しそうだ。
だが、俺としては、早く家に帰って二人を死ぬほど甘やかしてやりたいんだけどな…。
「先生、これ…！」
「……またか…」
「痛い…いだい…！！」
白い痣が、肩から腹にかけて覆っている。そこを押さえて痛い痛いと蹲る患者。珀鉛病と呼ばれるこの病気。その治療法も見つかってないし、痛みを抑える薬も、今はまだない。
「…取り除くにも、この範囲の広さじゃ難しい。何回にも分けるしかないが…」
「助けてくれ……もう、苦しいのは嫌だ…！！」
「……先生」
「一番強い鎮静剤を。病室に連れて行ってくれ」
「わかりました」
治療してくれ…！！と叫ぶ患者に目を伏せた。鎮静剤を打ったところで気持ち程度にしか効果はない。それを知っているのだろう。彼はたしか、ここに務めている看護師の家族だったはずだ。
「……はぁ」
ここ最近、この珀鉛病を患った患者が搬送されてくる回数が増えた。というか、そればかりだ。一気に発症しているため、初めは感染症だと疑ったが、どうやらそういうわけでは無い。父さんとの情報共有と調査の結果わかったことだ。
「A、居るか？」
「！父さん」
「だいぶ参ってるみたいだな」
「…あぁ、毎日こんなに苦しんでる人たちを見るのは、ちょっとな」
「珀鉛を取り除けば問題ないんだが…それをするには血も人数も足りない」
「国外に求めたらどうだ？隣の国は協力してくれるだろ」
「あぁ。今検討してる」
暫くの沈黙が続いた。
「お前に会いたいってローが寂しそうにしてたぞ」
「…ラミは？」
「ラミはいつもお前のところに居るだろう」
「っはは、確かに。今日は来なかったけど、昨日は来てた」
「その分甘えれないんだろう。最近は私のところに医学書を持ってくるようになった」
前までは兄さま〜って言ってたのにな。と笑った父さん。
「それじゃあ、良い兄さまになろうと頑張ってるローにご褒美上げなきゃな」
「あぁ。そうしてやれ。そしたら私もラミと遊べる」
「アンタそっちが本音だろ」
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
