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「ロー」
「……」
「おーい、ロー」
「……」
むすくれて返事をしないロー。うーん可愛い。可愛いのだけど、そっぽを向かれたままではせっかくおやつにと作ってきたおにぎりが冷めてしまう。
少し悩んで、おにぎりの乗ったトレーを机に置き、椅子の横に小さなぬいぐるみを持って蹲っているローを抱き上げた。
「ぅわっ！？」
「なんで無視するんだ？兄さま寂しいぞ」
「……さびしくないだろ」
うる、とローの大きな目に水の膜が張る。最近ではめったに見せなくなった貴重なぐずぐずタイムがやってきたようだ。ぎゅ、と眉根を寄せて唇を噛む不器用な泣き方はどこで覚えてきたのか。椅子に座ってポンポンと頭を撫でると、小さな手が俺の服を掴んだ。
「っ、にいさまは、おれのにいさまなのに、」
「……ん、？！」
「ほかのやつら、いっぱいにいさまのこというんだ、！おれのほうがいっぱいしってるのに！！」
………ハァ。
家の弟可愛すぎない？
何この可愛い生き物。そんなに俺のこと好きなの？安心しろ、兄さまも大好きだ。
…まぁ、ローの話を要約するとこうだ。
俺はやっと父さんの助手を離れて病院に勤務するようになり、仕事は専ら小児科専門だ。だから小さい子たちは俺が一度は診察をするし、入院している子などは俺のことをよく慕ってくれている。今日も、母さんと入れ違いになるはずだったが、ローと同じくらいの子が駄々をこねた為帰るのが遅くなった。まだ幼いローはそれが気に食わないのだろう。
「ロー」
「…なに」
「俺が苦手なものなーんだ」
「……さしみ」
「正解！誰も当てられなかったのに！」
「！」
すごいなぁ、ローはというと、ゆる、とほおが緩んだ。その頬をムニムニといじりながらローにゆっくり話をする。
「俺はローだけの兄さまだよ。絵本はみんなに読むけど、おやつでおにぎりを一緒に食べるのはローだけだ」
「ん」
よし。どうやら機嫌は治ったようだ。頃合いを見てちょっと待っててな、と言って席を立ちおにぎりの乗った皿を取った。
「じゃん！」
「おにぎり！」
「っはは、おやつで食べようか」
「にいさまのおにぎり！」
やっぱりうちの弟は世界一可愛い。
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
