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2年前、つまり、俺がこの家に来て1年目に、国の中心部に移り住んだ。
ネイさんはめちゃくちゃ優秀な医者らしい。だからか、国で一番大きな病院に勤めることになったそうだ。勿論、リニーさんも一緒に。
そんなわけで、今住んでいる家は馬鹿みたいにデカい。そして、周りに住んでる人たちの上品さと言ったらもうキラキラしてて眩しかった。
「あら、A君じゃない」
「あらホント！相変わらずきれいな顔立ちねぇ」
「こんにちは、婦人方。ご無沙汰してます」
それはここに住みだして二年たった今でも変わらない。というか、苦手だ。スラム育ちの俺には正直肌に合わない。
でも、やっぱり二人に迷惑かけるわけにはいかないから、必死に言葉遣いを勉強して一般教養と呼ばれるものを身に着けた。
……結果。
「ねぇ、うちの娘を嫁に貰う気はない？」
「あら、うちの子も引けを取らないわよ？」
見合いの話が後を絶たなくなった。
「俺のような小僧に可愛らしい娘さんたちなんてもったいないです」
「そういわずに！」
「トラファルガーさん家の息子さんなら任せられるもの！」
どうしてこうなったと全力で誰かに問い詰めたいが、誰も悪くないのでどうしようもない。無下にすることもできないが、オバサン達の娘さんはもう20歳を超えてる。俺に進めてくるな馬鹿。
…うなだれても仕方ないか……これは強行突破するしかないな…。
「婦人方、」
「ひぇ、…！」
「父を待たせてるので、そろそろ失礼します」
上目遣いになるようにして、愁いを帯びた瞳を向ける。少し小首をかしげて意味ありげにほほ笑むと、オバサン達には有効だ。
最近覚えた、美少年フェイス有効作戦だ。ちなみにこれはリニーさんが教えてくれた。
「……はァ、めんどくさ」
そうして家に入ると、ガシガシと頭を掻きながら、部屋に戻った。
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作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年1月28日 14時
