57 ページ10
北の海を回って2年、つまり、俺がこの船に拾われて2年と少しが経った。
ドラゴンさんとあの話をして以降、医者という立場が崩れることはなかった。
…が、俺は船員に稽古を付けてもらうことが増えた。やっぱり軍に居る限り、自分の好きなように戦えるとは限らないし、俺も鍛えたかった。
おかげさまで覇気も使えるようになったのだ。武装色は少し苦手だけど。
「島に着きました！」
「ここが北の海で最後の島だ。ここを出たら、東へ行く」
「「はい！！」」
食料補給と休憩を兼ねて寄った島。そこには王国もあるらしい。兵士たちが元気よく返事をしているのを見ていると、横にハックが立った。
「ルブニール王国…うそつきノーランドで有名な王国だったか？」
「あぁ。北では有名だな話だ」
「あ、おい！どこに行く！？」
「街に行く。医学書が何冊か欲しいんだ」
「お前の部屋は今足場がないだろう！？これ以上増やしてどうするんだって聞けェ！！」
サングラスをかけて、船から降りる。街は確かあっちの方だったか。
歩いていると、綺麗な街並みが見えてきた。まずは本屋だ。そのあとは適当にふらつくとしよう。
そう計画立てて大きな道を歩いていると、
「でか、」
真っ黒な羽根のコートを羽織った男がドシドシと歩いていた。3メートルくらいあるんじゃなかろうか。
厳つい顔つきだしメイクしてるし、危ない人の可能性大だ。す、と目をそらした瞬間、その人はひっくり返った。
「ハァ！？」
思わず声をあげてしまった。いや、だってあそこ何もなかったよな？
「いたた…」
「……大丈夫か」
「あァ…悪りィな」
「いや、いい」
手を貸すと、ヨイショとその人は起き上がろうとして、またこけた。
「…悪りィ、ドジなんだ」
「そうか…」
なんとも言えない雰囲気をかき消すように、その男が口を開いた。
「なぁお前、病院場所わかるか？」
「病院？…病院なら、ここから北にまっすぐのとこにあるはず…」
「恩に着る！」
「あぁ、足元気を付けろよ」
「おう！ありがっ」
ズテーンッ！
「だから言ったろ。…俺は医者だ、病人なら俺が見ようか？」
「本当か！？…ありがてぇ話だが、デケェ病院じゃなきゃダメらしいんだ」
「複雑な病気か…確かに。それなら病院へ行ったがいい。お大事にな」
「あぁ！ありがとう！！」
男は、そう言うなり、転けながら走り去って行った。
「…変なやつ」
あんな元気な病人もいるんだな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 364人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れい！(プロフ) - 続き気になりますもう更新はしないのでしょうか？ (2022年10月8日 18時) (
レス) @page32 id: 9b5f9f849f (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - こんにちは〜！凄く最高な作品で、一気に全部読んでしまいました！どんな感じで再開するんだろ？これからが楽しみです！自分のペースでのんびり更新頑張ってください！応援してます！ (2022年8月14日 18時) (レス) @page29 id: 9d8dc0f18d (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - こんばんは、夜分遅くに失礼します。主人公も、主人公とキャラクターの絡みも大好きです。1話から一気に読んでしまいました。本当に続きが楽しみです。更新待っています。 (2022年2月21日 2時) (レス) @page29 id: dce884b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
雪林檎V2(プロフ) - 瑠璃アゲハさん» コメントと応援ありがとうございます！嬉しい限りです！再会シーンは私も早く書きたくてたまりません！！これからも引き続き読んでいただけたら嬉しいです！ (2021年2月10日 1時) (レス) id: 0b7b2175db (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃アゲハ(プロフ) - こんにちは！いつも楽しませて頂いてます！続きが気になるばかり、再会が楽しみです！応援しています！ (2021年2月9日 21時) (レス) id: b1b687d56b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪林檎V2 | 作成日時：2021年2月9日 18時
