11.思い出 ページ11
「覚えてる?」
きりやん君が連れてきてくれたのは公園だった。私はこの公園をよく覚えている。…というより、忘れるわけがない。忘れられない。
「覚えてるよ。私ときりやん君が初めて会った公園、だよね。」
「覚えててくれたんだ。良かった。」
「…私、公園では遊べなかったけど、公園で遊んでる皆を羨ましそうに見てたのは覚えてる。」
昔の私は自分の体が弱いことをなんとなくしかわかってなくて、大きくなったら遊べるようになると思ってたんだよなぁ…。お母さんに我儘言って、公園まで連れてきてもらって…でも遊んじゃダメって言われてたから、ただベンチに座って皆を見てただけなんだよね…。
「それでオレがAに話しかけたんだよね。何してるの?遊ばないの?って。」
「うん。それが切欠だったね。」
遊べないんだって答えたらきりやん君は驚いた顔して。お母さんがなんとか子供にも分かりやすく説明してくれて、きりやん君はその言葉を聞いて納得してくれたようだった。その時はそれ以上会話することはなかったんだけど…次の日体調を崩した私はきりやん君のお父さんの経営する病院へ連れていかれて。入院することが決まった。
暇をもて余してボーッとしていると、あっ、って声が聞こえた。声のした方を見ると、公園で会った男の子。それから私はきりやん君と話すようになったんだ。
「でも…きりやん君、何で此処に…?」
「…折角、久しぶりに外に出れたんだし…たまにはどうかなって。オレにとっては、Aと出会えた大切な場所だし。」
「私にとってもそうだよ。きりやん君と出会えたこの場所は、大切だし、大事だよ。」
そう言い終わると同時に引き寄せられる体。少し経って、きりやん君に抱き締められてるって気づいた。
「…きりやん君…?」
「…あれから何年も経ったのに…オレがAの病気を治すって約束したのに…ごめん、無力で…。」
「そんなことないよ!きりやん君は頑張ってるよ。私はよく知ってるもん。」
「…A、オレ、頑張るから…だから、それまでもう少し待ってて…?」
いつになく弱気なきりやん君に、私はどうしたらいいかわからなかった。
「…きりやん君、私、平気だよ?きりやん君が側にいてくれるなら、頑張れるよ。きりやん君がいてくれるなら、待てるよ。」
「…A、何でそんな優しいの?」
「だって私、きりやん君が好きだもん。」
「…え?」
きりやん君は私から離れると、真っ赤な顔でその場に座り込む。
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さくらもち@実況者にハマり中(プロフ) - よしちゃんさん» ありがとうございます…!まだ四人分しか完成してないのですが、私の小説でキュンキュンしていただけのなら幸いです! (2022年1月3日 9時) (レス) id: e24fa9aac3 (このIDを非表示/違反報告)
よしちゃん - やばい、、、!読んでる間に何回キュンキュンしたことか、、、どの作品も最高ですっ!ちょっとknさんの話から全て読み直してきますねε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(^♢^)┘ (2022年1月3日 8時) (レス) @page16 id: 752f2b57a5 (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@実況者にハマり中(プロフ) - つゆさん» kirさんは割りとすぐ決まりましたね…!コメント励みになるのでとっても嬉しいです…!5作目も頑張ります! (2021年12月30日 9時) (レス) id: e24fa9aac3 (このIDを非表示/違反報告)
つゆ - krさんバージョンきた…!やっぱkrさんの医者いいっすね〜今回も素敵な作品ありがとうございました!5人目も楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年12月29日 22時) (レス) @page16 id: 5d979c15e9 (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち@実況者にハマり中(プロフ) - もみじさん» ありがとうございます!カフェは私のWTさん初作品なのでそう言っていただけて嬉しいです〜!私はFAで見かけたESCAPEの動画が面白くて本家を見に行った記憶があります!ついに本買えたんですね!おめでとうございます! (2021年12月29日 21時) (レス) id: e24fa9aac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらもち | 作成日時:2021年12月28日 2時