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「慧〜!久しぶり、元気だった?」

「う、うん。久しぶり、母さん。」

「やっぱり慧は可愛いわね…。あ、これお土産!」

「わ、わぁ…ありがとう…。」

母さんから紙袋を受け取って、チラリと中身を覗く。

…うん、予想通りフリッフリの可愛い服だな…。

「えーと、大ちゃんの親も帰ってきてるんだよね?」

「ええ!こっちには三日しかいれないけど…明日は大貴君も一緒に出掛けましょうね!」

「…うん、楽しみにしてるよ。」

とりあえず話を終わらせて、自室に戻る。

一応、母さんから渡された服を広げてみる。

「…どっから見つけてくるんだ、こういうの…。」

そう呟くと同時に、隣の大ちゃんの部屋の扉が開く。

「あ、伊野ちゃん。」

「お疲れ、大ちゃん。」

「なんで俺らの親ってあんなハイテンションなんだろうね?」

「まあ…テンション低いよりは良いんじゃない?」

「それまた買ってきてくれたんだ?」

大ちゃんの目線は俺が広げている服へと向く。

「うん。多分明日来てこいって言われる。」

「でも可愛いね。伊野ちゃんなら似合うよ。」

「…まあ、俺可愛いからね。」

服をタンスに仕舞って、スマホを手に取る。

「ん、薮からLINE来てる。」

薮からのLINEは、テスト終わったら二人で何処か出掛けないかという内容だった。

「…デートかなんかのつもりかな…。」

あんまりカップルらしいことしてないけど、一応付き合ってるわけだし?

…デート…そりゃあしたいよね。

いいよ。ところでこれって、デートだったりする?

ちょっと薮をからかってやろうって、つもりで打ち込んだ文章。

既読はすぐについて、1分と経たない内に返事が来る。

宏太当たり前。でも、女装はしてこなくていい。素の伊野尾とデートしたい。

…素の俺、ね。

そう?折角だから滅茶苦茶可愛くなって行こうと思ってたのに。薮がそう言うなら素の俺で行くよ。

母さんが買ってきたあの服も、薮の目に触れることはないんだよな。

…そう考えると、流石にもう新しい服を買ってきてもらうのは…。

…でも、母さん自身が服買うの趣味みたいなとこあるし…。

うーん、と頭を悩ませていると。

「伊野ちゃんさ、可愛い服着るの嫌なの?」

「え?」

「…薮ちゃんの影響もあるかもだけど、最近…割りと普通の服着てるから。」

「…嫌、ではないけど…。」

俺だって男だし。

今は似合ってても、時間が経ったら…。

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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年8月14日 1時

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