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薮の家からの帰り道、薮が家まで送ってくれたけど一度も会話をしなかった。

「…ありがとう。またね、薮。」

「…うん。」

家に入る前、隣の大ちゃんの家を少しだけ見つめた。

…大ちゃんはずっと、どういう気持ちだったんだろう。

「あれ、伊野ちゃん。おかえり。今帰ってきたの?」

家を見つめてたら、大ちゃんが家から出てきてびっくりした。

まあ、大ちゃんの家だし出てきても何も不思議ではないんだけど…。

「う、うん。さっきまで薮と一緒にいたんだけど…。大ちゃんは、どうしたの?」

「用事があった訳じゃないけど、ちょっとコンビニ行こうかと思って。伊野ちゃんも一緒に行く?」

薮のあの言葉を聞いた後でも、目の前で話す大ちゃんはいつもと変わらなくて。

やっぱり、ただの偶然なんじゃ…?とすらおもってしまう。

「…俺は、今日はいいや。ちょっと疲れちゃった。」

「そっか。また明日ね、伊野ちゃん。」

「うん、また明日。」

歩いていく大ちゃんを見て、俺は家に入った。

「…はぁ…。」

俺も何度かしたことあるけど、演技って疲れる。

演劇部みたいな、本格的な演技だと尚更。

…もし大ちゃんが本当に俺を好きなら、大ちゃんは本心を隠してずっと演技してることになる。

いつからなのか、わからないけど…もしかしたら相当長い時間演技、してたのかな…。

出そうになるため息を堪えて、自室のベッドに寝転ぶ。

ボーッとする頭でスマホを見てると、珍しく親から連絡が来た。

…明日、帰る?

親からの連絡にはただ一言“明日帰る”とだけ書かれていた。

「…うわ、まじ…?」

親のことは嫌いじゃないけど、帰ってくると必ず…必ず新しい服買ってくるんだよなぁ。

フリッフリの可愛いやつ。

そもそも俺がこう育ったのも親が自由にやらせてくれたからなんだけど、流石に俺も高校卒業したらやめるつもりだし…。

一度、女の子がほしかったの?ってきいたら、そういうわけじゃないけど俺が可愛いからって言われたことあるし…。

とにかく家の親はめんどくさいんだよな…。

それに、俺の親が帰ってくるってことは…。

玄関からバタバタと騒がしい音がして、やっぱりとさっき堪えたため息が溢れた。

「伊野ちゃん!明日、親帰ってくるって連絡来たけど…伊野ちゃんも!?」

「まぁね。いつものことでしょ。」

…当然、大ちゃんの親も帰ってくるんだよなぁ…。

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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年8月14日 1時

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