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｢…ごめん、薮。俺、薮のこと嫌いじゃないよ。でも…俺自身の気持ちがよくわからないんだ。…こんな気持ちのまま、薮と付き合うのは失礼な気がする。だから…今は付き合えない。｣
ごめんね、薮。
せっかく本音を言ってくれたのにごめん。
こんな曖昧な答えしか出せない俺でごめん。
｢…ごめん、ね…。｣
泣くべきは俺じゃないのに、何故か涙が溢れてきた。
違う、薮を困らせたいわけじゃないの。
だからそんな悲しそうな顔しないで。
…なんて、俺が言っていい言葉じゃないよね。
俺が薮にそんな顔させてるんだよね。
｢…伊野尾、泣かないで？｣
｢…やぶ…。｣
なんでそんなに優しいの？
どうしてそこまで俺に優しくしてくれるの…。
｢いいんだよ。さっきのが伊野尾の本音なんだろ？だったらまだまだ俺にもチャンスがある。…絶対伊野尾を振り向かせてみせるから。伊野尾の気持ち…俺が気づかせてあげる。｣
薮は俺を抱き締めようとして、動きを止めた。
｢…ほんとは今すぐ抱き締めて涙を拭ってやりたい。…けど、伊野尾が俺以外の人を選んだらそれは俺の仕事じゃないから。…だから、彼氏になるまでとっておくよ。ほら、涙拭いて？｣
｢っ…。薮は…いっつもそうだよね…。肝心な時にほしい言葉をかけてくれない。してほしいことをしてくれない。…本気で俺を振り向かせるつもりなら今すぐ抱き締めて涙を拭いてよ！｣
ああ、俺何言ってるんだ？
こんなの、薮が好きだって言ってるようなもの…。
薮が…好きだって…？
…本当は…。
｢バカ…やぶのばか…。｣
俺はずっと前から…。
｢やぶなんて…。｣
気づいてたはずなのに…。
｢…大好きだよ、ばか…。｣
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作者名：さくらもち
| 作成日時：2017年8月14日 1時
