449、命令 ページ28
「…ああ、Aお嬢様。どうしました?こんなところに呼び出すなんて…珍しいですね?」
お義父様達と対峙して、全速力で走ってきたせいで息が上がってる。
なのに、涼介はいつも通り飄々としてて、ちょっと羨ましい。
私が今から一大決心した想いを伝えるなんて、思ってもいないんだろうな。
『…そうね、涼介。』
「はい?」
『私達、今までいろんなことあったわね。』
「…?えぇ。」
『私が記憶喪失になったり、涼介が私の執事を辞めたり、皆で遊園地行ったり、デートもしたわね。』
いつくか涼介にとっては苦い記憶だったようで、一瞬顔を歪めた。
『…ねぇ、涼介。いつくか質問に答えてほしいな。執事の涼介としてじゃなくて、山田涼介として。』
「…わかった。答えるよ、いくつでも。」
涼介の答えに安心して、私は微笑みながら頷いた。
『私が記憶喪失になった時、涼介はどう思った?』
「…すごく、悲しかった。」
『私の執事を辞めた時、どんな気持ちだった?』
「離れたくなかったよ。皆が、Aが大切で大事で…大好きだったから。」
『皆で遊園地に行った時は。』
「楽しかった。心からそう言えるよ。…まあ、薮君の件で少し焦ったけど。」
『…デート、した時は?』
「…柄にもなく、ドキドキした。」
涼介の言葉一つ一つが嬉しかった。
全部、私のためを想って言ってくれてるのが伝わったから。
『ありがとう。今の涼介の言葉で、確信がもてた。…言う決心が、ついた。』
思えば、涼介が執事になってから本当にいろいろなことがあった。
言葉じゃ言い表せないほど、沢山のことが。
…私は、涼介に命令をしたことがあっただろうか…。
あったかもしれないし、なかったかもしれない。
…ううん、今はそんなのどっちでもいい。
どちらでも、構わない。
…大事なのは、今から言うこと。
わざわざ此処を指定したのは、理由がある。
涼介の立っている地面から1、2、3段階段を登る。
くるりと振り向いて、涼介を真っ直ぐ見据える。
『…山田涼介!!執事である貴方に、最初で最後の命令をします!
…私の、彼氏になりなさい!』
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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年5月10日 18時