滅, グラファイト/Midnight Neighbor/リクエスト ページ31
「やっほー」
何ともまあ気の抜ける第一声で、突如滅の背後に現れたのはバグスターのAだった。顔見知り、と言うよりは、彼女が一方的に遊びに来るだけの間柄。計画の妨害はせず、それどころか助言をくれることもあるので、邪険には扱えないまま、いつしかそれが当たり前になってしまった。
「滅ちゃん、元気？」
「今日は何の用だ」
「ただの生存確認さ。相変わらずクールだね」
モニター前に座る滅の両肩に手を置いて覗き込む。そのアルファベットと数字の羅列を読み解くことは容易い。しかし人類滅亡計画に賛成も反対もない彼女にその必要性はなく、すぐに興味を失って目を逸らした。
「ま、何はともあれ元気そうで良かった」
勝手知ったる態度でソファに腰掛け、転がる用途不明のオブジェを弄ぶA。滅は手を止め、彼女に向かい合った。
「A。我々の仲間になる気は無いのか」
「またその話？ ならないよ、絶対」
「何故だ」
「君は私を似ていると言うけれど……バグスターとヒューマギアはどうしたって交わらないよ」
人間の手で生み出されたデータの塊という共通項は確かにある。けれど、人間に対する意識が根本から異なるのだ。滅、アークが人間の悪意を疎んじる一方で、Aたちバグスターはそれほど人間を嫌っているわけじゃない。個体によっては好意的でさえある。ゲームの対戦相手、という認識が一番近いだろうか。
そもそも、”AA”は檀黎斗という人間が生み出したキャラクターだ。これが独立した自我かと問われても答えられないという自覚を彼女は持っていた。そして滅もまた、アークの意志の元に動く傀儡に過ぎない。彼が真にシンギュラリティに目覚めているかどうかなど、Aに知る術はない。完全なる個を確立できないもの同士で対等に契約しようとだなんて、随分滑稽だ。
「だからごめんね、この関係に甘えさせて」
「……仕方がない」
「ふふ、ありがとう」
別種族であり、互いの目的が重なりも衝突もしないからというのもあるが、滅は案外Aに寛容だ。
「滅のそういう所好きだよ」
「そうか」
たとえプログラムにすぎないとしても、皮肉げに笑うその仕草がAは好きだった。
「君は本当に綺麗だ」
「それをお前が言うのか」
「素直な感想であり、事実じゃん？」
Aの周りじゃ綺麗なものは珍しくないし、美人は三日で飽きるとも言うが、滅の造形はそれらには当てはまらない。冷艶という言葉がこれ程似合う面立ちもないだろう。
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深月(プロフ) - 横峯俊さん» お久しぶりです、まだ見てくださっていたのですね……！励みになります、ありがとうございます (2021年7月23日 9時) (
レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも拝見させていただいてます。いつまでも、更新は待っています！ (2021年7月20日 18時) (レス) id: e7388357bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水記 | 作成日時：2020年8月13日 20時
