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「僭越ながら、申し上げたいことが」
「鬱陶しい、前のように話せ」
「りょーかい」
王と家臣の立場で用いるべきではないと、計画を始動してからは自制してきた私語。独り言として飛び出ることはあっても、会話となるとまた話は別で。最早忘れかけてすらいたけれど、堅苦しく対等でないまま話したくはなくて、錆び付いたそれらを引き摺り出した。
「さて、何から話せばいいか……」
「ま、焦らなくても時間はいくらでもある」
面白い皮肉だ。タイムジャッカー、時間を乗っ取る者。最も、今ではその力もなく自分たちの時間が自然の摂理に従い流れていくばかりなのだけれど。
「まず、状況確認と行こう。私はもう時間に干渉する術さえ持たないが……ティード、君はどれくらい力を失った？」
「同じくらいだろうなァ、こんなザマからして」
眉を寄せ、左手を外光に翳すティードに内心舌を巻いた。あれだけの攻撃を受けて尚、私と同等。いかに彼が強力な才を持っていたかが分かるというものだ。
「復元の望みは」
「ない」
「そうか」
手酷く負傷したスポーツ選手がリハビリを重ねても復帰は難しいように、この能力もまた、そう易々と蘇りはしない。時間停止も時間移動も不可能。可能なのは、精々軽い瞬間移動と精神への干渉、防御くらいか。
「……一応聞くが、今後の計画は」
「全部水の泡だ」
あれほど生に貪欲だった癖に、何もかもどうでもいいみたいな目をして。目を離したら泡のように消えてしまいそうで、隣に座って彼の肩に頭を預けた。
こうやって甘えられるのも、もう何年ぶりだろうか。下手したら十数年かもしれない。やっと近くまで来れた。なのに、ここでお終いなんてあまりに寂しい。
相変わらず冷たい手。だけれども確かに生きている手。確かめようと強く握って、何故だか胸が痛くなった。
「死にたいと思ってるのか、ティード」
「……こうなった以上、生きてる意味もないと思っただけだ」
「仮面ライダーを消せなかっただけで？」
「求めたって何も手に入らないと分かった、それで十分だ」
人間ってのはつくづく哀しいイキモノだ。私も、ティードも。本当に欲しいものは何一つ手に入れられず、そのくせ必要ともしない奴が平気でしまい込んでいる。
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深月(プロフ) - 横峯俊さん» お久しぶりです、まだ見てくださっていたのですね……！励みになります、ありがとうございます (2021年7月23日 9時) (
レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも拝見させていただいてます。いつまでも、更新は待っています！ (2021年7月20日 18時) (レス) id: e7388357bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水記 | 作成日時：2020年8月13日 20時
