城戸真司/Be quiet!!/リクエスト ページ25
リクエストありがとうございました！
喫茶店花鶏。営業時間は既に終了し、店内に客の気配はない。蓮や店主の沙奈子、優衣はもう各々の部屋へと引き上げている。居るのは今日の片付けと仕込み当番、真司とAの二人だけだった。
「なあ、さっき蓮と何話してたんだ」
一方は皿洗い、一方は掃き掃除担当。ざあざあとシンクが水に叩かれる音が時折交じる。だが二人の距離はそれ程遠くなく、静けさも相俟ってその声はよく通った。
「蓮と？ ……ああ、好きな写真家さんの話」
ぱちり。目を瞬かせたAは、すぐに言葉を咀嚼し事も無げに答えてみせる。それからさも不思議そうに首を傾げ、真司に訊き返した。
「それがどうかした？」
「や、えーっと、楽しそうに話してるな、って……」
そう来るとは想定もしていなかったのだろう、動揺があらゆる動作から滲み出ている。段々と尻すぼみになっていく声は、彼の問いがそう純粋なものではないことを如実に物語っていた。
ここまであからさまな態度だと当然心情やら経緯やらの察しもつく。大凡のところを理解するのに数秒とかからなかった。
そして、そんな面白い話をAが放っておく筈もなく。箒を動かす手を止め、一転表情筋を緩めからかうような悪い笑顔を浮かべる。
「さては嫉妬かい、真司」
「べっ、別にそんなんじゃ」
みるみるうちに顔を赤くする真司に、彼女の笑みは益々深まった。こう分かりやすく良いリアクションをしてくれる人が相手だと、からかい甲斐があるというもの。
こんなのもう乗るしかないな。胸中の独り言を、当然彼は知らないし知る由もない。
「知る人ぞ知る、って感じだから語れる人今まで居なくてさ。まさか蓮が知ってたとはなぁ」
若干芝居がかったこれ見よがしな仲良しアピールに、真司がむっと眉を寄せる。全く以て狙い通りの反応だった。
「誰だよ、その写真家って」
「真崎剣一。片付け終わったら一緒に見る？」
「……見る」
強調された”一緒に”なんてワードに、怒りも嫉妬心も雲散霧消し気が抜けたように呟く。元々が身勝手な嫉妬だ、返す刀など持ち合わせてはいない。見事に手玉に取られたわけだ。
「っくく、ごめんって。からかい過ぎた」
「Aはいっつもそうだよな」
口を尖らせて子供のように拗ねるのが愛おしくて、Aは今度こそ、正真正銘無垢に口角を上げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茜(プロフ) - 深月さん» アッ…とても光栄です…ありがとうございます……！ (2020年5月18日 18時) (
レス) id: 085524ccf4 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - 茜さん» と思ったら先日拝見した作品の作者様でしたか……!!ここで言うのも妙な話ですが、タイトルのセンスも作風もとても素敵で楽しませていただきました。ささやかながら、私も応援しております！ (2020年5月18日 18時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - 茜さん» コメントありがとうございます！分かってくださる方がいて嬉しいです!!振り回される大我先生はかわいいという謎の確信。今後もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2020年5月18日 18時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - イケメン女子と花家大我良いですね…大我をウサギちゃん扱い…好き過ぎます…。これからも応援しています…！ (2020年5月18日 17時) (レス) id: 085524ccf4 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - supedoinさん» 通知こなくて気づくの遅くなりましたすみません!!萌えを提供できたようで何よりです(*^^*) (2020年5月17日 14時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水記 | 作成日時：2020年1月26日 21時
