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「一応、褒め言葉として受け取っておこう。だが────」
一度断ってから、思ったままの、同じく本心をそのまま口にした。
「そういう言葉は、むしろ君の方が似合う」
途端、Aは驚きに満ちた瞳を見開いて表情を凍りつかせた。先程まで平気でページを捲っていた手も、今やぴしりと硬直している。とはいえそれでもまだ軽いほうだった。彼女は免疫があったからそれだけで済んだのである。普通の女性ならば血を吐いて卒倒していたかもしれない。
だって。いつも凛とした眸は優しく細められ、紅を差したみたいに色の良い唇は緩やかな弧を描いていて。そういう、あまりに綺麗な笑顔を浮かべてそんなことを言ったのだ。あの一条薫が。
一瞬くらりと眩暈がしたが五秒程で無理やり立ち直る。片手で髪をかきあげたAは、それから重い重いため息を吐き出した。
「……薫、それは狡いって」
「それはどういう意味だ？」
惚けてるわけでもないのが特に質が悪い。自覚すりゃよりどりみどりだろうに、つくづくもったいない男だ。そんな所もまた、一条が一条たる所以なのだけれど。
「君程の美人が秀一みたいなキザなセリフ吐いて落ちない女なんて、精々レズくらいだっての」
その声を受けた一条が瞬きを繰り返して、彼にしては珍しく時間をかけて内容を噛み砕いた。
「……Aは、同性愛者、だったのか？」
「あー、やっぱそっちになるか」
婉曲に伝えたつもりだったが、案の定そちらに捉えられた。私の恋愛遍歴知ってるでしょうが、と突っ込みたくなるところを賢明な判断で噤む。代わりに、どこまでも答えに近いヒントを教えることにした。
「異性愛者だよ、一応。桜子さんにクラっと来る時はあるけどさ」
茶目っ気でぱちりとウインクを決めつつ、目印用にと置いてあった付箋を手に取る。書類から一束を抜き出し、そのうちの何枚かに貼り付けた。独断で添えた関連事項と重要部分とを区別するための、彼女なりの濃やかな気配りだ。そしてそれを机の面で揃えて手早く纏めると、椅子を引いて俊敏に立ち上がった。
「じゃ、届けてきますね、”一条くん”」
分かり易く”薫”呼びから苗字へと切り替え、後ろ姿でひらひらと手を振って────思いついたようにサムズアップを形作って。礼を言う時間も引き留める時間も与えず、振り返りもせずに彼女は部屋を出ていった。
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茜(プロフ) - 深月さん» アッ…とても光栄です…ありがとうございます……！ (2020年5月18日 18時) (
レス) id: 085524ccf4 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - 茜さん» と思ったら先日拝見した作品の作者様でしたか……!!ここで言うのも妙な話ですが、タイトルのセンスも作風もとても素敵で楽しませていただきました。ささやかながら、私も応援しております！ (2020年5月18日 18時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - 茜さん» コメントありがとうございます！分かってくださる方がいて嬉しいです!!振り回される大我先生はかわいいという謎の確信。今後もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2020年5月18日 18時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - イケメン女子と花家大我良いですね…大我をウサギちゃん扱い…好き過ぎます…。これからも応援しています…！ (2020年5月18日 17時) (レス) id: 085524ccf4 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - supedoinさん» 通知こなくて気づくの遅くなりましたすみません!!萌えを提供できたようで何よりです(*^^*) (2020年5月17日 14時) (レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水記 | 作成日時：2020年1月26日 21時
