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「色々お片付けしなくっちゃ。最短ルートってやっぱりミラーモンスターの餌かなぁ？」
「丁度いい、こいつらも腹を空かせてる」
約立たずの売人はもう要らないし、秘密を抱えたまま死んでもらうことにしよう。
珍しく完全に一致した見解で、意気揚々と狩りに出かけた怪物達を見送る。いってらっしゃい、頼むぜ相棒。悪人共が美味しいのかなんて、食人趣味のない私には知る由のないことだけど。
タスクが終わった途端、不安定だった情緒の後遺症故か急激に力が抜けた。薬の抜けきらない思考能力の低下した頭でぼーっと浅倉を見つめる。わたしの、私のメサイア。トクベツ。やっぱり、いくら考えても君が私を救ってくれる理由が分かんないんだよなぁ。
「……さっきからなんだ、鬱陶しい」
無愛想な文句、確かに少々不躾だったかもしれないと瞬きのついでに視線を落とす。
「ごめん。えっと……どうして君がここにいてくれるんだろう、みたいな？」
へらりと笑って小さく首を傾げると、浅倉はそれを一笑に付して私の目元を手で覆った。温い真っ暗闇で、優しく鼓膜を揺らす低い声だけが緩やかな道標。
「さァな。お前にはイライラしない。……それだけだ」
「そっか」
含みを持たせた言葉尻に後ろ髪を引かれるも、追及する勇気は持ち合わせていなかった。距離感の模範解答、烏滸がましくも私は現状で満たされている。近づきすぎる恐怖、失う恐怖、そんなの一生知らないままでいたいから。
その可能性を視野に入れている時点で手遅れかもしれなくても、微睡みから覚めるにはまだ早いだろう。
散々眠った後で寝れやしないのに、形ばかりで目蓋を閉じて浅倉と呼吸を合わせる。
独り凍え死んだわたしは、すくわれても尚一抹の猜疑心から虎視眈々と熔けかけの私を観ている。もういちど独りに戻ったその日には、今度こそ一緒に死んであげるから、そんな日が来ないよう分不相応に願っていてくれ。
メサイア。どうか今だけは、わたし達に安寧を。
質の悪い頭痛と幻覚を和らげる体温に縋って、視界を塞いでいた手を握る代わりに彼の胸元に額を押し付けた。
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作者名：水記 | 作成日時：2021年12月26日 23時
