【特撮短編集】Reborn Ⅹ (ページ18)

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「お前、よりにもよって映司に似やがって」
「え、そう？この十年、一番付き合い多かったからかな」

　最も、映司くんのあれは八割方天然だろう。一方で善性と欲望を人並みに持ち合わせただけの私。あんなにも純粋に割り切れないから、私自身、似ているという自覚はそう存在しないのだけれど。強いて言うなら、無意識下で感化されてはいるのかもしれない。
　生きた証と言うのは些か傲慢にしろ、こうやってあちこちに面影を残しているのだろう。私がアンクに映司くんの影響を見い出したように。それは時々痛いけれど、幸せなことだと思う。誰にとっても。
　ああ、また意識が逸れてしまった。
　帰りたくないと心のどこかで思っている自分がいるのは本当。しかし比奈姉や信吾兄達にこれ以上心配もかけたくない。

「行こうか」

　思い切って踵を返して歩き出した矢先、すれ違いざまに左手を取られた。細くて長い指が絡み、強く握り留められる。冷たいわけじゃない。けれど、温もりの感じられない手。
　踏み出した足を止め、目を瞬いてアンクを見上げた。なんてことない風に強く前を睨む変わらぬ横顔。呆気に取られているうちに、アンクの方がやや早足で歩き出すから、蹴躓きかけながらも引き摺られるものかと追いすがる。
　そっか。ここまで許されてるんだ、私も。
　強く握り返して隣に並ぶ。
　所々鉄骨の剥き出しになったビルの残骸を過ぎて、階段を降りきって出口。同時に向いた方向は右と左の見事な正反対。

「バカ、帰り道はこっちだ。ったく、方向音痴は健在らしいなァ」
「面目ない……」

　この世界を知ったばかりのアンクに負けるとは。照れ隠しに顔を逸らしてもう一方の手で口元を覆いながら、同じ歩幅で歩いていく。いつの間にか、ペースは落とされていた。

　──帰ろう。皆の元に。この十年、変わり続けた世界の話をしよう。映司くんのこと、アンクのこと、私達のこと、未来のこと。
　最期のピースの欠落を知っている伽藍堂を、それでも埋める為に。いつかの終焉、そのピースが綺麗に嵌るように。

『生者の行進』

　どうやって探り当てたのやら、比奈姉を先頭に皆が遠くから駆け寄ってくる。小さく手を振り返しながら、歩みを早めた。他人事のような面をしているが、貴方もその対象なんだけどな、アンク。