【特撮短編集】Reborn Ⅹ (ページ17)

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ねぇ、映司くん。埋めるでもなく大きな欠落を抱えながら、前向きに美しい終焉を目指して歩むことは、貴方の意に反するだろうか。少なくとも私は醜いとは思わない、それどころか理想的に思えるのだけれど。
　死者は答えを返してはくれない。生者は選択を強いられ続ける。当然間違える。
　別にいいじゃん。そんなの、置いていった人間が百で悪い。
　冷めきった空は、十年前のあの日のように澄んだ青色をしていた。受け止めるべき人はもう居ないのに、きっとまた懲りずに見上げてしまう。
　悲しき哉人間の性。……うん。やっぱり、恨むよ、映司くん。
　困ったなぁ、と眉尻を下げて柔和に笑う彼が、瞼の裏に見えた気がした。

「……そろそろ戻ろっかな。アンクはどうする？」
「そもそも何の為に此処に来たと思ってる」

　春とはいえ朝はまだ肌寒い。すっかり体を冷やしてしまった。そんな事情ありきで切り出せば、ふてぶてしく一蹴された。

「何の為にって……」

　当然のように続けようとして言葉に詰まる。朝焼けを見に来たか、風に当たりに来たか、そんな辺りだろうとつけていた見当が軒並み不正解だと、一人分の鼓動に痛感させられる。
　次を。ヒントを探して視線が泳ぐ。

「はん、そんなことも思い当たらないか。この十年で鈍ったんじゃないか？」

　とんとん、と人差し指でこめかみを叩いて煽られ、ようやくそれの意味する所を察した。黙って煽られてやるのは癪で、しかし自ら口にするには確信が持てない。間違っていたら恥ずかしいので。

「うん、鈍った」

　下手くそな誤魔化し笑いに真っ先に応えたのは案の定の鋭い舌打ち。

「比奈と信吾が五月蝿かったから探しに来た。これで満足か」
「あー……ごめん。迷惑掛けたね」
「誰もそんなこと言ってねぇだろうが」

　他人に行動理念を左右されるアンクではない。つまり、比奈姉と信吾兄だけじゃなく、彼自身も気にかけてくれた、という解釈で良いのだろうか。自惚れじゃなければ。

「ありがと。おかげで随分……そうだな、楽になった」

　控えめに微笑むと、露骨に嫌そうな顔をされた。なんでだ。