【特撮短編集】Reborn Ⅹ (ページ15)

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五年。ようやく頼りにされるだけの立場を得た。
　八年。行き詰まっていた研究に、少し進展が生まれた。
　十年。全てが水泡に帰した。
　費やした時間と努力を無駄とは思いたくないが、虚しさだけはどうにもならない。
　……振り返ってみれば、私も私で生きる意味をすっかり失ってしまっていた。燃え尽き症候群。知りたい知りたいと身を焦がしていた欲望を、見失っている。

「ごめん。こんなんじゃ参考にならないな」
「最初ッから期待なんてしちゃいない。だが、そうか。お前も──」

　その先に続く言葉は、知りたいようで知りたくない。アンク自身も形に出来ないまま。
　何となく、わかる。
　寂しい。どうしようもなく、寂しいんだよな。比奈姉も信吾兄も、仲間と呼べる人達は沢山いる。だけど、何となく世界に置いていかれたみたいで、自分だけ、取り残されたみたいで。
　私とアンクじゃ何もかも違う、そんなことは重々承知だ。アンクは半永久的な命を授かった。死はある意味での救いなのに、彼には多分、それが無い。私達はいつか彼を置いていくだろう。その絶望は、遠からず終焉の訪れる私には到底想像し難い。
　それでも、この孤独感は共通のものであると、断言できた。

「いっそ心中でもしてみる？何かが見つかるかもしんないよ」
「はァ？とうとうイカれちまったか。いや、それとも元々か」
「失礼な。冗談だよ。……うん、冗談」

　ほんの冗談だった。少なくとも口に出したその瞬間はそのつもりでいた。が、案外真剣味を帯びてしまったそれらを誤魔化すようにへらりと笑う。その拍子に、目じりから雫が転げ落ちた。ままならない。

「もう一度、死ねるモンなら。……は、くだらん感傷だな」

　仮に死ねたとて、死ねるわけがないもんな。
　生きなきゃいけない。絡みつく強迫観念が彼の翼を縛る。それはある種の呪いだ。愛は時として、下手な呪詛よりずっとひとを苦しめる。

「ままならないね」

　呟いた。

「ままならねぇなァ、何もかも」

　でも、生きてくしかないんだよな。どんなに苦しくても、逃げ出したくても、それが遺された人間の宿命だから。

　やるべき事を、やらなくちゃ。

　そこまで考えて、思考が一気に塗り替えられていく。パチパチッ、と脳が弾けるみたいな音がどっかで鳴って、視野が拓けて、心臓が脈打った。