【特撮短編集】Reborn Ⅹ (ページ12)

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フィクションならば或いは救いがあっただろうか、なんて、自称滑稽なリアリストが笑わせる。
　世界はいつだって唐突に変化する。あの日のように、今日、私の小さな社会が終わった。
　アンクが戻って、最悪の王が斃れて、映司くんが死んで、世界は呆気なく平和を取り戻す。これだけ減ってしまった人類がこれからどう生きていくのかとか、問題は山積みだけれど、何はともあれ目前の脅威はなくなった。……大切なものを、数え切れないくらいたくさん犠牲にして。
　ぎぃ、と軋む音がため息の音に混じる。惰性で振り返れば、緩慢に開かれていく扉。姿を現したのは、十年前と何ら変わらないままの彼。

「……アンク」

　朝焼けに照らされるいつにも増して儚げな彼へ、躊躇いながらも声を掛けた。周りを赤く晴らして憂いを湛える目が二度、三度と瞬く。その動作が、この邂逅が想定外であると如実に語っていた。

「場所、変わろうか」
「いい。……ここに、居ろ」

　相変わらずの傍若無人な物言いはさておいて、驚くべきことにアンクは殊勝な態度で私の隣に並んだ。とても彼らしくない弱々しい姿にかける言葉も見当たらなかった。思うところは沢山ある。話し合うべきことも沢山ある。でもまだそれらを上手く外には出せない。
　目を閉じる。耳を澄ます。
　……心臓の音が、聴こえない。信吾兄の体じゃない、セルメダルの模造の体だ。彼の目に、この美しい朝焼けは映らない。
　それを知った途端、無性にかなしくなった。
　残酷だ。映司くんのエゴは。蘇らせたくて蘇らせた。己の命の灯火を代償に、生を知った彼からまた五感を奪って、それでも生きて欲しいと願ったその切実は、痛いくらいに伝わってきた。だけど、それにしたって、残酷だ。
　一緒に生きてやらないのも、これからのことも何も考えてない、無責任で独りよがりで自己犠牲精神の成れの果て。彼の隣に相棒たる貴方が居てやらなくてどうするんだよ。それは私なんかじゃ到底、比奈姉ですら代われない貴方だけの役目なのに。
　共感した気になっただけの自己満足的なかなしみに隣の生命の存在が重なって、どうにか止めたはずの涙の傷口が開く。この傷が癒える日は来るのだろうか。癒えてしまうのだろうか、時の経過とともに。それが人間という生き物の真っ当な在り方で、私達にとっても良いはずで。だけど、一生癒えないで、疼き続けて欲しいとも思う。