愛し愛され英国紳士!その26

3 ページ12

「裕翔走って！」

『圭人、これからどうするの！？』


真夜中、寝ている裕翔を無理やり起こしてあらかじめまとめてあった荷物を持たせて急いで部屋を出る。
でも、例の少年が大声で騒いだおかげで他の刑務官に気づかれて、裕翔とけーとは真っ暗な独房を必死に走って逃げ続けた。


走って走って、ようやくお兄さん達や同級生達に伊野ちゃんの姿が見えたところで、けーとは裕翔の手を離して背中を押した。


『圭人一緒に逃げようよ！皆と一緒ならきっと……！』

「……幸せになってね、裕翔」


けーとはここから逃げることは出来ない。
だからせめて裕翔に幸せになって欲しくて来た道を引き返した。


裕翔ごめん、ごめんね幸せになってね………。


その日捕まえに来た同僚達の前でけーとは初めて泣いた。
普段厳しい同僚達はこの日だけは何も言わずに黙って傍にいてくれた。


数カ月後


『中島裕翔無罪になったそうだ、どうやら議員を殴った理由が議員が女性に痴漢をしていたこと発覚したって正当な証拠があったそうだ

それとお前ら密告した少年、アイツは少年刑務所に移送が決定した
どうやら他の少年たちにも無理やり暴行にお前に対する行為も発覚したからな……もうここに戻ってくることはないよ』


淡々とけーとの荷物をまとめながら話す同僚
それに、小さく頷けば別の同僚にベシッと背中を叩かれた。


『しっかりしろ、せっかく来た迎えに腑抜けな顔を晒すな』

「迎え……？」

4→←2 *

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す