I trust you. Ⅱ (ページ20)

今日:23 hit、昨日:13 hit、合計:50,553 hit

そのとき矛盾はなにを思ったのかページ20

それは今回も突然だった。
焦ったように駆け足で行き交う人々の間を縫って帰路へとついていただけなのに。突然開けた視界の先には、今にも消えそうな透けた体の女性と怪物。
よせばいいのに、筒から飛び出た鉄砲玉のごとく駆け出していた。苦しそうな女性をなんとか支え、引きずるようにして距離を取る。気づいた男性が代わりに女性を担いでくれたので、自分も早くこの場から去ろうとしたのだが。
振り向いた先にはさっきの怪物。覚悟を決めて目を瞑ったが、一向に衝撃はこない。視界を埋め尽くすのは黒と紫。

「なんだ、全っ然滾んねぇ奴」

しらけるなぁ、と心底つまらなそうに呟き、後頭部に手を当てた一人の男性。さっさとゲームオーバーにさせるか、という謎の一言の後に鼓膜を揺すった、マックス大変身、という声。
ノリの良い音楽と共にチカチカと赤と青に輝くエフェクトが視界を覆い、あまりの眩さに目を瞑ってしまった。

「え…仮面、ライダー？」

最初に目に飛び込んできたのは、赤と青のコントラストが眩しい何者かが怪物と戦っている様子だった。あの時助けてくれた赤いライダーとは随分と印象の違う姿だったが、きっとこの人も仮面ライダーなのだろう。
ウラワザ！と派手な音声が鳴り、気づけば敵は倒されていた。

「おい、お前大丈夫？」
「は、はひ…」

ガッシューンという音声が鳴ると同時に元の男性の姿に戻り、私に右手を差し出した。手を貸してくれるということなのだろうか。感謝の意を述べ、その上に自分の手を重ね、立ち上がろうとしたのだが。

「なに、どうした？」
「ご、ごめんなさい…。腰抜けちゃったみたいです」

あまりの情けなさに涙が出そうだ。
男性は一瞬きょとんとした後、声を上げて笑い出した。ひとしきり笑い終えると、私と同じ目線までしゃがみこんで、考えるそぶりをする。
突如、膝下と腰付近に手を添えられたかと思うと、一気に視線が高くなった。

「しっかり掴まってろよ！」
「え、え！？」

ジジッという電子音のようなものが聞こえた瞬間、男性の体が紫色の粒子へと溶けていく。驚いて自分の体に視線を向けると、同じように小さな粒をまとって消えていた。自分の足先がない状態なんてそうそう見ることはないだろう。怖すぎる。
徐々に無くなっていく体とこの状況に頭はついていけず。私の意識はプツンと切れた。

「ただいま～」
「あ、お帰り…って、パラド！？どっどうしたのその子！」
「ん？面白そうだから拾ってきた」
「拾ってきた！？」