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いや、もう、さっきまでのは全部夢だったんじゃないかな。そう思うくらい気分はふわふわと浮いていた。
たいして面白い話もできず相槌をうつだけの僕に、彼女は嫌な顔一つせず、楽しそうにいろんな話を聞かせてくれた。それだけでも幸せなのに、胸のわだかまりを溶かすような彼女の柔らかな微笑みを、僕のためだけに向けてくれたのだ。なんのご褒美だろう。
自称、軽率に死ぬタイプのオタクなため、あの時間はご褒美という名のあの世だった。言いすぎとか盛りすぎとかは言わない方向で。
残りの講義は残念ながら彼女と被ってなくて、そのことを残念に思いこそしたが、やる気には満ち溢れていた。いつもより講義に集中できた僕は単純人間だと思う。
緩む頰を一生懸命引きしめながら歩いていると門の側に彼女がいた。どうせ帰るなら、一緒に帰ろうと誘うのもアリなのでは。しかし、所詮今日一日話した程度の仲。そんなに馴れ馴れしく接して良いものなのか。
葛藤していると、先ほどまで一人で歩いてた彼女の隣には、見慣れない男性が立っていた。
「あ、左さん！お仕事お疲れ様です」
「おう、お疲れさん。良ければ送るぜ？」
送り迎えをする仲なのか。仲睦まじく談笑している二人を見て、幸せだった気持ちは遠退いていく。
推しが結婚するってこんな気持ちなのかぁ、と少々見当違いのことを考えて、その場に立ちつくす。
「あの、帰りに事務所にお邪魔しても良いですか？亜樹子さんやフィリップくんにも会いたくて」
「ん？ああ、もちろん。二人もAちゃんに会いたがってたしな」
僕には到底理解の及ばない会話をしながら、隣のイケメン男性はヘルメットを差し出した。手慣れた様子でそれをつけていく彼女を見る限り、今日が初めてではないのだろう。
羨ましい。バイクに彼女を乗せて走るなんて、男の夢じゃないか。少なくとも僕は憧れた。
まあ、彼氏がいない方がおかしな話だよな。うんうんと二回頷いて再び歩き出す。
僕の青春を捧げたアイドルには、知らない間にイケメンの彼氏ができていたらしい。
ショックでしばらく立ち直れなかった僕は、彼女にとって男性は彼氏ではなくただの友人だったなんて知る由も無い。
ついでに、のちにイケメン男性の事務所に依頼をしに行くことも、もう一人いたイケメン…というよりは美少年と言った方がいいだろうか…、とにかく、顔の整った青年に牽制を食らうことも、所長と名乗る女の人に品定めをされ心がズタボロになるのも、まだ先のはなしである。
2019:イシのトウエイ キミとのカンケイ→←Iは止まらない/バイクと共に去りぬ
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星野よだか(プロフ) - ヤマダノオロチさん» ありがとうございます。詩島剛はてえてえの塊…。不定期ではありますが、これからも細々と続けていきますので、見かけた際には立ち寄ってみてくださいませ！ (2020年3月23日 21時) (
レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 更新お疲れ様でした！相変わらず詩島剛てえてえです（´-`）。色々と大変な時期ですが、また星野さんのお話を読めるの楽しみにしてます！ (2020年3月15日 21時) (レス) id: 20ed7c05bd (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - ツキノワ。さん» こちらこそ、随分と遅くなってしまい申し訳ございませんでした！せっかく素敵なお題をいただいたのに上手く纏まらずお待たせすることになってしまい…。こんな私ですが、これからもお読みいただければ幸いです〜！ (2020年2月16日 1時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
ツキノワ。(プロフ) - あぁぁぁ……めっっっちゃ素敵でした……リクエストを書いていただけただけでもとてつもなく嬉しいのですが、流石星野さんで、ずっとはわはわしながら見てました……！良かったです！！！本当にありがとうございました！ (2020年2月15日 22時) (レス) id: 90ddd0d9c3 (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - ヤマダノオロチさん» そっ、そんな……くっ、この遺言、しっかり伝えておきますからね……っ(( (2019年12月24日 23時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星野よだか(ほしのよだか) | 作者ホームページ：なし
作成日時：2019年9月27日 0時
