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「ねー、Aさん火貸して」
あれから時々、彼とはこの路地裏で顔を合わせるようになった。
「ん、」
「ありがと」
彼がゆっくり息を吐き出すと、ブルーベリーの甘ったるい香りが漂う。
一度、メビウスのオプションなんてやっぱり子供みたいとからかったら、
Aさんのだっておじさんみたい！って言い返された。
けど、この銘柄はわたしにとっては女の銘柄だった。
ベランダでセブンスターを吸いながら男と楽しそうに電話する母親の姿を、
今でも覚えている。
「ねーえー、聞いてる？」
「聞いてるよ、で、なんだっけ」
「ほらAさん聞いてない！地元のやつがね、おいしいから試してみろって…………」
龍我くんはいつも、昨日近くで芸能人がロケをやってただとか、明日は雨が強そうだとか、
ただそんなとりとめのない話をしてくる。
彼氏の雄登と居るときとは全然違う。ただただ、龍我くんがいるこの空間が心地いい。
「それがほんとにおいしいんだって！」
「チャーハンにガムシロップが？嘘だあ」
「俺のともだちが言ってたもん」
「龍我くんのともだち、味覚がおかしいんだね」
「え、」
急に彼が真顔になって、かと思えばまたニコニコし出した。
「どうしたの？」
「初めて俺の名前呼んだ！」
「そうだっけ」
「そうだよ！次は呼び捨てしてね」
「いつかね」
こんなやりとりをするのは久々で、なんだか照れてしまう。
下を向いたわたしの顔を、龍我くんが覗き込む。
「Aさんこっち向いて」
「ん？」
ふいに、龍我くんがわたしの顎を軽く持ち上げ、小さくキスをした。
「Aさんかわいいから、ちゅーしちゃった」
「また年上をからかわないの！」
年下相手に少しときめいた自分が恥ずかしくて、
龍我くんのおでこに軽くでこぴんをして立ち上がった。
「ごめんって、ねえもう帰っちゃうの？」
「うん、また今度ね」
えー、と龍我くんは拗ねていたけど、
さっきからポケットで軽く振動しているスマホを無視するわけにはいかなかった。
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きき(プロフ) - とっても続きが楽しみです。 (2018年7月24日 17時) (
レス) id: 9675e7c630 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい違反行為です。ルールをちゃんと理解の上作品を作って下さい (2018年6月18日 7時) (レス) id: 1efba5a087 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆ | 作成日時：2018年6月18日 7時
