27 - Yuto side - ページ28
.
Aを後ろにのせて、坂をぐんぐん登る。
「重くないー？」
Aのその質問に、今日だけは「重いわけねえだろ」と答える。
額にじんわり汗が滲んできた頃、やっと少し開けた場所にでた。
端が腐りかけた小さなベンチが懐かしい。
ジジジ、と微かな音を立てながら頼りなく光る電灯の下へ自転車を止める。
二人で並んでベンチに座ると、昔の記憶が蘇ってくる。
「なんか懐かしいな」
「うん、小学生の時によくこの裏山通って帰ったもんね」
「そう、Aがすぐ疲れたーって言って、このベンチで二人でお菓子食べて」
今日観た映画みたいな夕日がいっぱいに広がっている。
あのシーンほど立派じゃないけど、Aがいるだけで映画の何十倍もよく感じる。
「懐かしいね、お菓子持ってくればよかった」
「お菓子はないけど、これいる？」
バッグから袋を取り出すだけで、少し緊張した。
「ん？」
「誕生日プレゼント」
「嬉しい………！開けてもいい？」
「いいよ」
袋を開けたAが目をまんまるにして喜んでいるのを見て、なんだかホッとした。
「イヤリングだ、かわいい……！………どう？」
Aがイヤリングを耳元にあててみせると、夕日の光が反射して、それは一層輝きを増した。
「似合う」
「ふふ、なんか優斗がこんなお洒落なプレゼントくれると思わなかった」
「見直した？」
「うん」
「つけてあげる」
Aの後ろに回ってイヤリングを片耳ずつ付けていく。
ふと、Aがちらりと腕時計を確認しているのが見えた。
「そろそろ行く時間？」
「うん」
こんな時にもあいつのことを考えてるなんて悔しくて、
Aの頭の中を俺だけでいっぱいにしたくて、後ろから抱き締めずにはいられなかった。
「………優斗？」
「………なあ、あいつのとこに行かないでって言ったら、どうする？」
「………………」
「行くなよ、A」
「えっ」
Aが振り向いて、あまりの距離の近さに思わず二人して顔を背けた。
今の俺、カッコ悪。
「………なーんてな、映画のワンシーンみたいだったろ？」
「なにそれ、もう」
「よし、パン屋まで送ってくから乗れよ」
「うん。イヤリング、ほんっとにありがとう」
.
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←26
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆ(プロフ) - すこさん» コメントありがとうございます！頑張ります( ; ; ) (2018年6月28日 3時) (
レス) id: cafb98ccb8 (このIDを非表示/違反報告)
すこ - とても面白いです！更新頑張ってください (2018年6月27日 21時) (レス) id: 3e29e71749 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆぴ | 作成日時：2018年6月19日 20時
