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「時計仕掛けの婚約者(ファインセ)」5 ページ35

「美味しい・・・!やっぱりお姉さんの作るコーヒーは最高です」

「ありがとう」

コーヒーを美味しそうに飲む沢田に、愛理は満足そうに応える

その様子をアカルはカウンターから見守っていた
(尾崎・三浦コンビは空気を読ませて帰らせた)

「でも・・・高校の帰りに飲んでたのと、ちょっと味が違いますね」

「ブレンドは色々と工夫してあるから」

愛理がそう言うと沢田は寂しげな表情を浮かべ

「そっか・・・皆、前とは違うんですね」

その言葉に愛理が不思議そうに首を傾げると、沢田はしまったという顔をし謝罪した後、意を決して話し始めた

イギリスの学校に留学したものの学校に馴染めず、懐かしさに浸りたくて戻ってきたが、学校は改築されており、先生も部員逹もそんな雰囲気じゃない

「それに・・・編入してきた帰国子女の子を勝手に自分と重ねちゃって、でもその子は学校に馴染んでて友達もいる・・・私とは違うなって思っちゃって」

(あ・・・)

アカルは合点がいった

懐かしさに浸る筈が、学校も先生も部員も前とは違う事で更に孤独を感じた事、加えて明日香の言葉で、益々自分を追いつめてしまったのだ

その事を自嘲気味に伝える沢田に愛理は

「そういうの寂しいわよね・・・」

と言い、頷く沢田に続けて

「でも、変わっちゃうのよね・・・皆、同じ所にはいられないから・・・このブレンドと同じかな」

コーヒーカップを持ち諭すように言う愛理

その例えは合っているだろう

時が過ぎれば古い建物は壊されるか改装され、人は成長しその時代に適応できるよう変化していく

ずっと同じではいられないのだ

「ただ、覚えてる事は確かじゃない?」

「沢田さんがちゃんと覚えていれば、それは無くならないと思うな」

愛理の言葉に沢田は俯いていた顔を上げる
その表情は迷いが晴れたようにスッキリしていた

(覚えていれば・・・近い内、愛理姉さんが思い出したら・・・今度は大丈夫なの?)

アカルは桜井侑斗がいなくなってから一人で泣いていた愛理を思い出す

思い出した時、笑顔を失わないか無茶しないかと不安になったその時

(・・・え?)

凄まじい寒気に襲われたアカルは辺りを見渡す

この前ハナに相談した”何か”の気配を何故か”店内”で感じ取ったからだ

(店内には愛理姉さんと沢田先輩しかいないのに・・・)

不気味に思いつつも、二人に菓子を持って行く
緋色のひびが惜しいと言うかのように消えるのに気付かないまま・・・

「接触」→←「時計仕掛けの婚約者(ファインセ)」4


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らい(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしています。更新は大変だと思いますが、自分のペースで頑張って下さい。応援しています。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 02ecfe8e59 (このIDを非表示/違反報告)
にわとり(プロフ) - 初めまして、お話読みました。素敵です..!私も書き始めて浅いですが、よければ読んで、意見を聞かせてください..! (2019年8月25日 18時) (レス) id: b7c5b25082 (このIDを非表示/違反報告)
オンブラ - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年8月9日 0時) (レス) id: 8751dc96a1 (このIDを非表示/違反報告)
- 続き楽しみにしています! (2019年3月15日 20時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rin | 作成日時:2019年1月12日 1時

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