狼は柱を嫌う。

疲れと痛み ページ4

『ん？.........！姉さん！コレっ！』

(姉)「どうしたn...ッッッ！」

俺が見つけたのは、母の横たわっていたすぐ横に書いてあった文字だった。









母の達筆で美しい文字は、擦れ、歪み、読むのもやっとだった。

痛みと、信頼した殿方の変わりように驚き、また、耐えた。
その状況が、手に取るように伝わってくる。









《急いで。ここにいてはいけない。時期に帰ってくる。三丁目、甘味処、菊の花、向かって。
愛してるわ。許して。二人の可愛い娘と、立派な息子た 》







途切れた文章は、
最後まで、愛の言葉でいっぱいだった。







ﾄﾞｽ…ﾄﾞｽ…ﾄﾞｽ...。




(姉)「行きましょう。」

さよなら、

『うん。』

あなたがくれた

優しい、暖かい宝物

大切な、大切なこの命

決して無駄にせず

産まれた環境を愛し

最後まで









頑張るからね。









(姉)「走って！」









(姉)「はぁ...。ここ...ね...。」



必死で駆けた。

着物が乱れようが、

下駄の鼻緒が切れて

裸足になっていようが。







トントントン

(姉)「ごめんください。」









はぁーい！


ガラガラガラ







(??)「どちらさ...ッッッ！もしかして、姉さんとこのっ！」






『グスッ...ッッッ。』


俺も、姉さんも泣き出した。


(??)「さぁさ、辛かっただろうに。中へお入り。」





優しいこの人は、母の妹の祐理子さん。

旦那さんと二人でこの店を営んでいるらしい。

実は祐理子さん、子供の産めない体質であり、
女の子が欲しかったそうで、俺達のことをとても可愛がってくれた。









しばらくしたある日。
俺は買い物に出た。

今日は、姉の誕生日。
櫛や、簪、お二人にもらったお駄賃で、町の雑貨屋さんへ来ていた。








『んー。決めた！これにしよ！』



姉の笑う顔を思い浮かべ、うっすらと茜色に染まった道を小走りで家路を急いだ。









『只今戻りまし...』

(祐理子)「お父さん！もう辞めて！こんな小さな子にあんな辛いことさせたくないの！」

(旦那)「まぁ、お父さん。落ち着いてください。お、おお、お団子でも。」ｵﾛｵﾛ






なんだこれ。

祐理子さんの腕の中で怯えたように、涙を溜め今にも泣きだしそうな姉さん。


必死にお父さんから姉さんを守る祐理子さん。


オロオロしている哲平(旦那)さん。


そして、恐らくこの話の元凶のお父さん。





いや、お父さん！

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