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月夜の狼 ページ13

『うっ...。』



この前の宣言から師範は、初歩的なことは一切教えてくれなくなった。



聞いても、「ハッハッハ!お前ならできる。」
と誤魔化されてしまう。



もう、二ヶ月も経っているのに、師範に触れられない。


師範の羽織りにすら手が届かない。



朝も昼も夜も、毎日毎日練習した。


師範に教えてもらったことを、一つ一つ思い出し、身体に刻み込んだ。



(師範)「A。もう時期日が暮れる。また後で続きをしよう。」



『はい…。』




俺はまだ、何も覚えてないのか。

この豆だらけの手は、飾りなのか。


あまりに無力な自分に苛立ちが募る。



師範は、そんな俺を見て、少し切なそうに笑った。









夕餉を終えて、俺は一人で鍛錬に向かった。


暗く染まった空に、飾り物のような星が煌めく





まるで、血で滲んだ、豆だらけの手のように。









ヒュンッ





『九百九十八、九百九十九、千!』



木刀が何か当たるものが欲しい。と嘆いているようにも聴こえた音。



そんな嘆きも虚しく降ろされる手。



『母さん、俺...俺!』




ガサガサガサ



『ひぃっ!』









目の前にいたのは狼だった。



狼は銀色の毛をなびかせ、近寄ってくる。


木刀をかまえる。




この刹那、頭の中でよぎった。


最終選別で、鬼の腹の中に入るくらいならば、

狼の生きる源となり、死んだ方がいいのでは?

と...。



A。よくやったな!

A、気をつけるのよ。

A、今日のご飯はなんだろうね!



師範や母さん、姉さんの声が、まるで今、聞いているかの様に鮮明に思い出させる。



やらなきゃ。

生き残るんだ!


木刀を握りしめる。









『えっ!』


狼は、俺の羽織を引っ張り、草藪に連れていく


その時だった。




ドスン...ドスン...ドスン



思わず息を呑む。

冷や汗が止まらない。

歯がガチガチと音を鳴らし、叫びだしそうなのを、必死に堪えた。




嗅いだことの無い異臭。

父の使っていた薬品だって、鼻がツンとして臭かったが、コイツはまるで魚を腐らせたような
臭いがする。



吐き気が襲った。

同じ人だったとは思えないほどの

狂気に満ちた顔。

鋭く伸びた爪は、月明かりを受けて

てらてらと赤く光っている。



『うぅ...。』


しまった!


【んあ?美味そうなガキじゃねぇか。】

月夜の狼 弐→←やっぱり無理。



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黒孤 - この作品面白いですね!!狼と夢主ちゃんは一緒に行動しないんですか?僕一緒行動すると思ってました。更新頑張ってください!! (2019年10月17日 21時) (レス) id: d64dd6f51c (このIDを非表示/違反報告)
banana(プロフ) - 皆様!読んで下さり、誠にありがとうございます!感想を見てニヤニヤしているキモい作者ですが、これからも頑張りますので、宜しく御願いします! (2019年10月16日 15時) (レス) id: d3e0ea658a (このIDを非表示/違反報告)
狂狐(プロフ) - 今日見つけたんすけど一瞬にしてこの作品に惚れました!文才なととても凄いと思います!更新頑張ってください!応援して (2019年10月14日 13時) (レス) id: 8ba41bb7e5 (このIDを非表示/違反報告)
麻里 - これ、好き。更新、頑張って下さい (2019年10月6日 18時) (レス) id: c144890f71 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬。 - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張って下さい。 (2019年10月4日 14時) (レス) id: 954f1fe671 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:banana | 作成日時:2019年9月8日 16時

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