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第4話【楓切】 ページ4

何か暖かい物に包まれて、引き上げられるような感覚と共に僕は意識を呼び覚ます。
魂に刻まれた通りに瞼を開き、刀剣男士として、今度の主に仕える刀の付喪神としての名乗りを上げる。

「楓切です。貴方が今度の主ですね、よろしくお願いいたします」

短い名乗りを終えた僕に掛けられたのは返しの挨拶ではなく、呻き声だった。
目の前で正座をしている主は目に光が宿っておらず、ああ……ああ……と繰り返し呻いている。
下手な妖よりも恐ろしいその様子に思わず目を逸らすと、勝色の髪を持つ同族の方と目が合った。

「えっと、どうもお初にお目にかかります。楓切です」
「どうもどうも、僕は帆凪藤四郎です。主様がすみません……予想外な事続きで疲弊してるんです」

予想外の事とは何かと聞くと、帆凪さんの横に居た白い鉢巻を巻いた方、岳丸さんが説明してくれた。
今この本丸には本来本霊が手を貸していない……つまり実装されていない、未実装の刀剣しかいないらしい。
未実装だけでも予想外なのに、更に五回連続で来ている……なるほど、主が呻いているのも納得出来る。

「それは……主が疲れているのも納得出来ますね」
「報告書とか出さないといけないみたいだから、肉体的にも精神的にも意味でも疲れる、と思う」
「多忙そうですね、その報告書って僕でもお手伝い出来るでしょうか……所で貴方は?」
「あ、えっと……焔丸、だよ。君よりちょっと先に鍛刀されたんだ」
「そうなんですか、よろしくお願いいたします」

軽い会話に挨拶を織り交ぜつつ、先程から放置していた主の方を見る。
いつの間にやら復活していたようで、もう呻いてはおらず、目には光が戻ってきていた。

「主、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……うん」

まだ動揺はしているが、さっきよりは全然マシだ。

「鍛刀を続けていたようですが、また鍛刀いたしますか?」
「……いい! いい! もう鍛刀するのやだ!」

どうやら鍛刀の事がすっかりトラウマになってしまっているようだ。やらかしたな。
ちらりと帆凪さん達の方を見ると、全員難しい顔をしていた。

「書類……もやりたくない……出陣しよ……」
「戦が終わったら書類も出来ますか?」
「出来る……」

正直心配だが、主は出陣すると固く決めてしまっているようなので口出しは出来ない。
それに、精神を持ち直す為にも良いんじゃないかという岳丸さんのお言葉が決め手となって僕達の出陣が決定した。

……そうだ、先に初鍛刀の方と顔合わせをしなければ。

第5話 【斬田串】→←第3話【 焔丸 】



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赤信号(プロフ) - 更新終了しました。 (2019年4月23日 0時) (レス) id: 674c6f2783 (このIDを非表示/違反報告)
赤信号(プロフ) - 更新します。 (2019年4月21日 23時) (レス) id: 674c6f2783 (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 終わりました。 (2019年3月30日 11時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 連続で申しわけありませんが更新します。 (2019年3月30日 10時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 終わりました。 (2019年3月10日 23時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時の政府(ニセモノ) x他8人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tekitouni  
作成日時:2019年1月23日 0時

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