【小説版】政府未実装しか居ない本丸【刀剣乱舞募集企画】 (ページ12)

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第12話【小桜藤四郎】ページ12

粟田口派の短刀、小桜藤四郎は本丸の庭に植えられている桜の木の下に腰を下ろし、幹に背中を預けていた。

先日、叔父にあたる篠村国吉が鍛刀され、粟田口派が増えたことに喜びを感じていた。
叔父上が鍛刀された日に、喜びのあまり飛びついた帆凪兄。あの時は大人しくしておいた僕も、ホントは飛びつきたかったな…なんてことを思い出して1人笑う。

自分が顕現した時はどうだっただろう…

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綺麗な桜の髪に赤い瞳。胸までの長さの髪はポニーテールに結ばれている。あと、刀派粟田口の揃いの軍服。
これが、付喪神としての自分の姿らしい。

「ぼ…僕は小桜藤四郎です。よろしくお願いします…主さま。」

緊張しながらも、片膝をつき、新しい主に忠誠を誓う…つもりだった。
でも返事がない。機嫌を損ねたのではないか、なんて不安が頭をよぎった。
顔を上げれば、未実装…とうわ言を言いながら放心している人物と、その人の隣で苦笑いをうかべる付喪神。
大丈夫かと口を開こうとした時…放心状態だった主が動いた。

「粟田口ぃぃぃいぃぃ！！ほっ…帆凪ぃぃぃいぃ！！！」

帆凪…？まさか…帆凪兄がここに居るのか？
また、帆凪兄と一緒に居ることが出来るの…？
なんてことを考えていれば、部屋の外の廊下を走ってくる足音。
その直後に、スパンっ！と開かれる襖。
聞こえてきたのは懐かしい声。

「主様ー。刀派粟田口帆凪藤四郎、ただいま馳せ…あっ！」

予想していた人物、帆凪兄こと帆凪藤四郎は僕の姿を見て硬直した。
……かと思えば、少し涙目になり僕の名前を叫びながら飛びついてきた。

「帆凪兄…くるしいよ…」

自分よりも何十センチも大きな体の彼に抱きつかれているため、少し首がしまる。
だが、帆凪は全く離してくれる気配がない。
仕方ないので、帆凪がくっついているままで、改めて主に挨拶をすることにした。

「えっと…改めまして。僕は小桜藤四郎です。よろしくお願いします、主さま。頑張って戦うから、お傍に置いてくれると嬉しいです！」

主もそのそばにいた岳丸さんも苦笑いしながら、よろしくと返事をしてくれた。

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そういえば、あの後帆凪兄に本丸を案内してもらったんだよね。
あの日の帆凪兄は、自分の後に来た初の粟田口派だったから、テンションがすごかったと誰かが言ってたな…
そんなことを思い出してはまたクスッと笑う。

さぁ、本丸に戻って桜餅でも作って、帆凪兄とか叔父上とかと食べようかな…