彩度68パーセント

合鍵に思いを込めて ___ sgi ページ22

( your side )



恋人と二ヶ月も会えていなくて寂しくない人がいるのだろうか。

彼が研究やら学会やらで忙しいのは重々承知しているし、我儘を言うつもりは一切ない、というか、言えるわけがなくて。


最近はオフィスにも顔を出していないようで、伊沢さんや福良さんからも「須貝さん元気にしてる？」なんて聞かれるんだけど、、、


そんなのこっちが聞きたいよ、、、

最近は気を使って連絡も送れていないし、悲しいかな彼からのメールや電話も、ここ一ヶ月ほど来ることはなかった。


、、、こんな時くらいお酒に溺れてもいいかな。

部屋に一人だし、誰にも迷惑かけないし、いいよね


この前お酒買い足しといてよかった。


度数の高いお酒を一缶ずつ飲み干していく。

そうしていると、段々と酔いが回って、正しい判断が出来なくなってしまった。


駿貴さんに、電話しよう。

時計の針は深夜0時を指している。

こんな時間に電話なんて常識的に考えて有り得ないし、普段なら絶対しないんだけど。

お酒の力を借りて、今日くらい。


呼び出しのコールが二回ほど鳴ったあと、二ヶ月ぶりの駿貴さんの声が聞こえて。


「A？久しぶり。どうしたの何かあった？」

『なんかあった？じゃないよ、駿貴さんは私に会いたくない？』

「俺だって研究が忙しくて、会いたくないとかそんなんじゃ」

『忙しくて会う時間が取れない？その言い訳何回目？』

「なんだよその言い方。」

『メール送る暇さえなかったの？電話の一本も出来ないほど研究に追われてたの？』


やばい、止まらない。これ以上はまずい、頭ではそう分かっているのに、言葉が溢れて止まらなかった。


「そこまで気が回らないんだよ、分かるだろ」

『分かんないよ！私はずっとずっと駿貴くんと会えなくて寂しくて、気が回らないなんて、分かんないよ、、、』

「あーもう！A今どこにいる！家か！？」

『家、だけど、、』

「じゃあずっと家にいろよ！外出るなよ！」

『え、もしかして今から』

プープー....


完全にやってしまった。

面倒くさい彼女になってしまった。

今からわざわざここまで来るってことは、別れ話だろうか、、、

鏡を見なくても顔が青ざめていくのがハッキリと分かる。

電話を切って15分ほどでチャイムが鳴り、緊張から心拍数が一気に上がって、心臓が破裂しそうだ。


一呼吸置いて、部屋の扉を開けると、そこには息を切らした駿貴さんが立っていた。

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