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『…海人、最近すげえ仕事がんばってるじゃん?それ、すげえいいことなんだよ。俺、マジで海人のこと尊敬してる。でも、』



『でも?』



『……でも、海人のこと見てると、どうしても焦るんだよ。まだ働けないままの自分が、すげえダメなやつな気がしてくる。』



『何言ってんだよ。元太が、ダメなやつなわけない。元太は、ずっと頑張ってきただろ?今休んでるからって、それがなんだよ?堂々と、体休めればいいんだよ。』



『うん、わかってるよ。俺も、そう思ってる。でも、やっぱりダメなんだ。俺、どうしても一回お前と離れなきゃいけない。じゃないと、落ち着いて自分と向き合えないと思う。』





ここまではっきり言い切られると、もう返す言葉もなかった。体の力が抜けて床に両手をついた俺の肩を、元太が2回優しく叩く。







『離れるって悪いことだと思ってたけど、この歌聴いてそうじゃないんだって気づいた。もっとたくましくなって、また絶対お前と笑って会えるようになるから。』





泣き笑いの顔をする元太を見ながら、俺はあの曲の歌詞を思い浮かべていた。





1番では、離れていた2人。でも、もっとたくましくなると誓って、また手を繋げる日を願っていた。そして、2番では本当にその日を迎えられた。







一度離れても、また繋ぐことが出来る。それが、手と手。









「…わぁ、った。」



「ほんと、?」





わかった、としか言えない。もう元太の気持ちは、十分すぎるくらい届いた。心から笑い合えるようになるために、離れなきゃいけないことだってあるんだ。







「ご、えん、あ。」



「は?なんで、海人が謝るんだよ。」



「ぉ、おれ、」







俺、全然お前の気持ちわかってなかった。





そう言うと、元太は小さく笑った。





『俺、手話習うようになって気づいたんだ。お前の言ってることはフィーリングで大体わかると思ってたけど、意外とわかってる気になってただけだったのかもなって。』





元太は、またさっきまでと同じように寝転んだ。





「…なあ、海人。俺たち、大人になっちまったな。お互いわからないこともあるってことが、わかった。」



「……ん。」







どんなに近くにいたって、長く一緒にいたって、わからないこともある。





でもそれは、多分悲しいことじゃないんだと、俺は元太の清々しい笑顔を見ながら思った。

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おさと(プロフ) - 6chanさん» 6chan様、コメントありがとうございます!短編のシリーズからお読みいただいていたとのこと、とても嬉しいです😭引き続き、こちらの作品にもお付き合いいただけますと幸いです! (2023年3月9日 22時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
6chan(プロフ) - 短編の時から好きなお話でした。が、まさか、更に障害系要素が増えて、更にこれからが楽しみです! (2023年3月9日 0時) (レス) id: f726c31193 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさと | 作成日時:2023年3月4日 19時

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